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同じ物語を3回繰り返す特異な構造の演劇「再生」。東京デスロックのメンバーを中心にした5年ぶりの再演に加え、北九州、三重、長久手で各地域バージョンを新たにつくり同時上演する画期的な試みがスタートしました。三重公演は、7月23日(土)、24日(日)。本番を間近に控え現地でクリエーション真っ只中の多田淳之介に、作品について訊ねました。


舞台は、民家の一室でおこなわれている飲み会。その都度かかる音楽に合わせて、次第にボルテージが上がっていって…という30分ほどのドラマが3回繰り返されます。このユニークな構造の作品で目指したのは、どんなことですか?

東京デスロックという劇団名には「死」と「鍵」という意味が込められています。「人は絶対に死ぬのに、なぜ頑張って生きたり幸せになろうとするんだろう?」ということを考えたくて、初期には死にまつわる戯曲を書いていました。「再生」を初演した2006年頃は、集団自殺が社会問題になっていた時期です。自殺を肯定するわけではありませんが、どんな死だったら自分は納得できるかと考えたら、できるだけ幸せな状態で死ねたらいいんじゃないかと。例えば、お酒を飲んでみんなで盛り上がって、ちょっと多幸感がある中で…とか。と同時に、演劇として新しい手法で何かできないかと考えていて、まったく同じことを繰り返したらどうだろうと思いつきました。人が死ぬ話を繰り返すことで、生き返るように見える。そんな構造にすることで、生と死を描けるんじゃないかと思ってつくった作品です。

俳優さんたちは、3回ともセリフはもちろん動きも一挙手一投足まったく同じことを繰り返すのですか?

基本的にはそういうミッションを背負っています。映像に録ったものを見比べてみると、かなり正確に繰り返していますよ。でも運動量が多いので、俳優たちの体がどんどん変わっていくんです。汗もかくし、完全に同じようには繰り返せないことも回を重ねるごとに増えていきます。でも、それは生身の体だからこそだということが見えてくる。人が死ぬ話なのに、演じている人の体がどんどん躍動して輝いていくんです。一方、だんだんと疲れて汗だくになってくると、お客さんからはつらそうに見えますよね。「彼らは苦しくて逃げ出したいんじゃないか」と思ったりするかもしれない。でも、すごく楽しそうな瞬間があったりして。ネガティブとポジティブが同居するところに惹きつけられる何かがあるんだと思います。舞台上で、生きることと死ぬことが同時進行しているのかもしれません。繰り返すという手法が、生と死を描くこととうまくマッチしたと思っています。


「再生」2017©bozzo


2回ではなく、やはり3回必要ですか?

1回目は、よくわらからないんですよね。騒いでるだけだし。2回目になると、いろいろと事情がわかった上で検証しながら観ることができます。そして3回目には、観る人が能動的に何かを見つけ出すんです。「この人、疲れ始めてる」とか「あれ?さっきと違って見える」とか。それは、お客さん自身も俳優たちと共有してきた時間の蓄積があるからだと思います。普通、演劇で同じシーンを何回も観ることはありませんよね、巻き戻せませんから。だから、けっこう見逃してる部分もあるんです。演劇は自分でフォーカスを選んで観るものですから、かなり個人的な体験。この作品では同じ話を3回観る中で、それぞれ視点を変えることもできます。今回のツアーのスタートとなった北九州バージョンでは、「3回観ると全員のことが把握できる」と言ってくれた人もいました。

三重バージョンのキャストは全員女性ですね。

オーディションで面白そうな方を選んだら、まさかの女性ばかり…という感じで。三重在住の人、三重出身で今は東京で活躍する人、愛知や関西を拠点にする人など、なかなか面白い8人のメンバーが揃いました。昨日から三重県文化会館で稽古が始まったのですが、ちょっとびっくりしてます(笑)。男性がいないと、こんなにも印象が違うのかと。女性しかいないと、女性の特性が強調されて見えてくるようなところがあって、今回それをどう利用するかで、劇団バージョンとかなり違った作品になるんじゃないかと思っています。


この作品では、音楽も重要な役割を担っていると思います。選曲はどのように?

音楽的に優れた楽曲でありながら、出演者の人生に流れていたものを選んでいます。世代を代表するような曲があるとお客さんの想像のフックにもなるだろうし、知名度と時代性を気にしつつ、ヒットメドレーになり過ぎないようにしています。今回は出演者にアンケートを取って「子どもの頃に聴いていた曲」「青春の曲」「今の自分を盛り上げる曲」などを挙げてもらい、選曲の参考にしています。三重バージョンの稽古では、「おジャ魔女」は誰世代で「セーラームーン」はいつ頃で、みたいな話も出ていましたね。「再生」は台詞が少ない作品なので、かける曲の歌詞が戯曲みたいなところもあるんです。登場人物のことを歌っているように感じたり、歌詞の聴こえ方が変わるのも面白いと思います。

劇団バージョンは5年ぶりの上演です。

5年前はデスロックのメンバーだけでしたが、今回は60代の岡田智代さんが入ってくださったので、かなり年齢の幅が出ました。自分たちが生まれる前のことも考えますし、ドラマが動くと思います。できれば三重バージョンとセットで観ていただきたいですね。どちらかを観ると、別バージョンも気になるんじゃないかと思うので。2日に分けてゆっくり観るのもいいけれど、1日で2バージョンまとめて観ると、結構すごい体験になると思います。

◎Interview&Text/稲葉敦子


7/23 SATURDAY , 7/24 SUNDAY
北九州芸術劇場×三重県文化会館×長久手市文化の家
東京デスロック「再生」 劇団+三重バージョン

チケット発売中
■会場/三重県文化会館 小ホール
■■ 開演/各日 三重Ver.13:00/劇団Ver.17:00
※7/23三重Ver.は前売完売/当日券あり
■料金(税込)/全席自由・整理番号付
〔三重ver.〕一般 ¥1,000 22歳以下 ¥500
〔劇団ver.〕一般 ¥3,000 22歳以下 ¥1,500
〔セット券〕一般 ¥3,500 22歳以下 ¥1,800

■お問合せ/三重県文化会館 TEL.059-233-1122
※未就学児入場不可
※22歳以下要身分証提示