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「上妻宏光」Web 限定インタビュー
取材日:2016.09.09


ジャンルを横断して活動する津軽三味線奏者の先駆け的存在の上妻宏光。
10月19日(水)にはベストアルバム「-粋 Sui-」をリリースする。
これまでのトライし続けた三味線奏者としての
キャリアを振り返ってもらうインタビュー。
続く佐藤竹善とのツアーについても話を聞いた。

上妻さんはメジャーデビューは2001年でキャリアはとても長いですよね。今回ベストアルバム「-粋Sui-」をリリースされましたが、選曲はどういう形でされたんでしょうか?

アルバムの1枚目から、各作品で自分の中でトライした楽曲をあげています。

確かに三味線の弾き方、他の楽器との共演など、様々なタイプの楽曲がありますよね。トライというと具体的にはどういう部分のことでしょうか?

1曲目の「游」という楽曲ですが、三味線というとどうしても日本の阿波踊りのリズムが多いんですね。どうしても陽気になりがちなものを渋い感じに仕上げたいと作った曲です。あと5曲目の「風」は民謡の“じょんがら”をベースにしてるんですけど、それを民謡っっぽく聞かせないようにしたもの。さらに今回は新たに能の謡(うたい)も組み合わせてます。実は能と三味線って絡みがないんですよ。音というと鼓というポンポン叩くものや能管という笛なんですね。だからいわゆる伝統芸能と呼ばれていても一緒にやらない伝統の世界があるわけなんです。それもあって謡を一緒に入れることにしました。あとは20歳前半ぐらいから謡い続けてきてる「田原坂」をアレンジして入れてますが、初めて民謡をステージで歌ったのがこの曲なんです。「荒獅子」は歌舞伎の音楽がベースなんですが、歌舞伎も津軽三味線が入ったことはないんです。細棹と呼ばれる三味線や長唄などはあるんですが、歌舞伎の音楽と津軽三味線の共演はないんです。

新曲としては、市川海老蔵さん主演のドラマ「石川五右衛門」のテーマ曲となる「月夜の影~石川五右衛門のテーマ〜」も収録されてますよね。

駆け抜ける疾走感はありつつ、暗い闇というか妖しさもちょっとあるようなものになっています。アレンジを本間昭光さんという方にやって頂いたんですけど、いきものがかりなどいろんなJ-POPをやってる方なんですね。エレキも入ったり厚みのある、割とエッジの効いたサウンドになってます。本当は挿入曲の予定だったんですが、この曲を聞いた監督が気に入ってくれて、テーマ曲にしてくださったんです。

歌舞伎や能と津軽三味線が絡まないって、言われてみればという感じで、意外ですね。

ぱっと聞くと歌舞伎には細棹で三味線が入ってるし、そんなに斬新ではないんですよ。いわゆる新作歌舞伎と呼ばれるものでは他の楽器が入ったりします。ただ古典で津軽三味線が入るのは異例。だから能や歌舞伎を知ってる人からすると、津軽三味線が入ってる!となるんですね。そういう内側の垣根も取っていきたいんです。それと合わせてジャンルの垣根も取りたい。縦横無尽に日本の古典の世界からジャズやクラシックなどいろんなものを渡り歩きたいと思っています。


リスナーからは曲の違いが分かりづらいかもしれませんが、そういう伝統の世界にいる内側の人たちの垣根を崩す方が大変そうに感じます。

大変なんですけど、それが10年、20年たつと結果に出てくるんですよ。例えば一般の方にはスカパラや志村けんさんとやったり、ドラマの主題歌をやったという方がわかりやすいですよね。なのでアルバムの中ではその配分も考えて、三味線を何も知らない人にも聞いてもらえる、反対に業界の人間にも何か提示したいという意図はあります。

今でこそ邦楽器と他ジャンルの共演は増えてきましたが、上妻さんが活動を始めた時代などはまだ珍しかったですよね。

僕がやり始めた時代にも先輩方はいたので、そういう人たちを含めて切り開いてきた部分はあると思います。ただ黎明期というかその時代にいた楽しさというのはあるんですよね。どう混ぜていけばいいのか、10代途中からずっと試行錯誤してやってきました。


今度の名古屋公演は「Standard Songs」のシリーズで佐藤竹善さんとの共演になりますよね。どういった内容でしょうか?

いろんなジャンルのスタンダード曲をやります。民謡をはじめJ-POPやオリジナルもやります。スタンダードなので古典も数曲演奏する予定です。

すでに何箇所かツアーをまわってますが、いかがでしょうか?

やはりインストじゃなくて歌モノの強さはありますね。日本語の響き方というのは、これまでと全然違う広がりがあるように感じます。竹善さんもジャズを取り組んでたりするので、ジャズのスキャットのように三味線とピアノとボーカルの掛け合いをしたりして、かなりライブ感があると思います。すごい楽しいですよ。

様々なことにトライしてきた上妻さんですが、今後やってみたいことなどはありますか?

作品を作りたいというのはありますね。津軽三味線は即興で弾くのが元だったので、ちゃんと音符が全部書かれたアンサンブルの作品を作りたいです。伝統モノでも、クラシックでの三味線のコンチェルトみたいなものとか。そういうものにもトライしていきたいです。




10/21 FRIDAY
上妻宏光”Standard Songs”
feat.佐藤竹善

チケット発売中
■会場/電気文化会館 ザ・コンサートホール
■開演/18:30
■料金(税込)/全席指定 前売¥6,300
■お問合せ/キョードー東海 TEL.052-972-7466
※6歳未満のお客様のご入場はお断りいたします