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平賀マリカ 歌う生活

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私の大学の同窓生にシンガーの大澤誉志幸さんがいます。「そして僕は途方に暮れる」の大ヒットでファンの方も多いと思います。彼とは同じ音楽系のサークルで、音楽論を交わし、先輩や後輩まじえてよく飲みに行きました。当時の私は、日米のポップス、フォーク、そして、大学3年生くらいからソウルを歌いだし、だんだんジャズに傾倒していき、ちょっと背伸びして大人のジャズボーカルに大いに興味を持ち始めていました。そして、大澤君(当時、いつもこんな風に私は彼を呼んでいました)はアーシーでブルージーな渋い声でサム・クックやオーティス・レディング等、リズム&ブルースやソウルを歌っていましたっけ。彼はとにかく歌うことが大好きで、いつもなにか口ずさんでいました。ある時、キャンパス内で彼に会った時、「フンフン~♪ルルル~♪イエ~、マリちゃん~(当時このように私は呼ばれていました)どう調子は?元気?」と挨拶とも歌ともわからない調子で話しかけてきました。私は「う~ん、最近、本当にジャズが好きになって、まじめにジャズを勉強したいと思っているところ」そう言った時に彼が、「あ、じゃあ、僕が大学の帰り道にいつも電車の中から見かけるボーカル教室に行ったら?」と、情報をくれたのです。その言葉をきっかけに私は某ジャズボーカルスクールに通い始めました。今思えば、それが私のプロシンガーへの序章だったように思います。その後、卒業間際で学生達が就職活動に奔走する中、彼は、当時組んでいたバンドで大手事務所と契約に至りレコードデビュー、サークル内では大ニュースでした。その後、ソロになり、楽曲提供、そして、自身も大ヒットを飛ばし大活躍をしました。ある日遅ればせながらジャズシンガーとしてプロになった私に、1本の電話が入ります。「大澤です。マリちゃんにレコーディングに参加してもらえないかと思って」突然の連絡にすごく驚きましたが、とても嬉しいできごとでした。コーラス、サブボーカルとして、2作ほど参加させてもらい、リリース後のツアーにも参加。各地で沢山の女性ファンに囲まれる彼を見て、つくづく、凄い人と仕事させてもらっている、と思い、改めて彼を誇りに思いました。それからは少し疎遠になったのですが、最近、あるライブハウスのパンフレットで彼の写真を見て、また一緒に歌うことが出来るかな、と思い、私はすぐに連絡を取ることに。電話の向こうの彼は、大学の時のまま。フレンドリーに接してくれて、共演を快諾してくれました。そして、彼のライブにゲストとして出演させてもらい、数日後の私のライブではサプライズゲストとして共演してもらいました。二人の共通語は大学当時のソウルミュージック。ステージで一緒に歌っていると、プロフェッショナルシンガーとして生きて行くことの喜び、苦しみ、そして歌う楽しさ等も分かち合える、そんな目に見えない感覚を感じました。離れていた時間もあっという間に元に戻せる、音楽という魔法の素晴らしさ。私がプロシンガーとして、歌っていくきっかけを作ってくれた彼に今、とても感謝しています。いい出逢いは心の中のどこかで大事にしていると、いつか花開くものですね。彼の新作が2月にリリースされ、4月28日(土)には名古屋ブルーノートでのライブもあります。皆さんも彼の酸いも甘いも噛み分けた大人のソウルフルな歌声に触れてみてはいかがでしょう。