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「栗山千明」スペシャルインタビュー
取材日:2017.08.12

10代で映画デビューし、深作欣二やクエンティン・タランティーノといった
巨匠、奇才の作品に次々に出演。
鮮烈な印象を残しブレイクした後も堅実にキャリアを重ね、
シリアスからコメディまで幅広くこなす演技派として存在感を示す栗山千明。
そんな彼女が、この秋、新たに取り組むのが
岡田惠和の書き下ろし戯曲「ミッドナイト・イン・バリ」です。
個性の強い男女4人が繰り広げる会話劇に挑み、
舞台女優としてどんな新境地を見せてくれるのか、興味は尽きません。


舞台に立たれるのは久しぶりですね。

5年ぶり、4度目の舞台です。バリ島での挙式を控えたカップルの結婚前夜のお話で、私は花嫁の幸子を演じます。天気が悪かったりして、無事に結婚式ができるのか幸子はソワソワ、イライラしているのですが、溝端淳平さん演じる夫の治はのほほんとしているわけです。そこでバトルが始まって、浅田美代子さん演じる幸子の母、中村雅俊さん演じる治の父も加わり、どんどんどんどん「そんなことまで言っちゃうの?」というような本音が飛び交う会話劇が繰り広げられていきます。幸子は喜怒哀楽の激しい女性で、思ったことを何でもストレートに言ってしまうがゆえに嵐を引き起こしてしまう…そんなこじらせ系女子なんです(笑)


岡田惠和さんの脚本をお読みになって、どんな印象を持たれましたか?

セリフのやり取りがとても面白いんですよ。それだけじゃなくて「ああ、こういう感じあるよね」って、きっと皆さんも思うような…例えばひとつの話をしているのに大きく脱線して「そう言えばさっき何を話していたっけ?」みたいなことは、日常によくありますよね…そういう場面がいくつもあります。映像だとそのナチュラルさやスピード感が編集されてしまうと思いますが、舞台は生ですから、混ざり合う会話やそのテンポを観客の皆さんにダイレクトに体感していただけるのではないでしょうか。脚本が本当に面白いので、その通りにちゃんと演じればいいリアクションもいただけると思っています。幸子という人物は自分の思いを表現することで発散する女性なので、けっこう長台詞もあるんです。演出の深川栄洋さんもおっしゃっていましたが、自分が気持ちよく喋ることを意識して、喋ることがどんどん楽しくなるような感じにできればいいなと思います。だから、自分に自信をつけるために稽古を頑張らないと…。


会話劇の面白さをしっかり感じさせるために必要なのは、どんなことでしょうか?

観る方を置いてきぼりにしないことでしょうか。「ハイスピード毒舌ラブコメディ」と謳われている通り、セリフがポンポンとハイスピードでやり取りされますから、ちゃんと理解していただける範囲でいいテンポ感を保つように意識しようと思っています。

数々のヒットドラマを手がけてきた岡田さん、映画監督の深川さんという映像畑のクリエイターによる舞台作品というところも興味深いです。

日常的なありそうでなさそうで…というようなお話ですし、いわゆる舞台らしい作品とはまた少し違うものになるんじゃないかと思いますね。より身近な感覚で観ていただけるような、これまで私が経験した舞台とはカラーの違う作品になるような気がしています。今はまだ本読みの段階ですが(8月の取材時)、これから立って動いて、共演の皆さんとのバランスや表現の範囲を探りながら作っていきたいと思います。

今回は東京公演を皮切りに、名古屋も含め全国各地を回られますね。

これまでの舞台は東京と大阪だけの公演でしたから、とても楽しみです。せっかくいろいろ回るので、それぞれの土地の美味しいものを食べられたらいいなと思うんですけど、そういう余裕が自分にあるかどうか…。名古屋めしは、私にとっては身近なものなんですよ。13歳の頃からずっとCMの撮影で年に3~4回は名古屋に来させていただいているので、名古屋名物といわれるものは10代の頃に食べ尽くしました(笑)。


これまで女優としてキャリアを重ねてこられた中で、舞台はご自身にとってどのようなものでしょうか?

まだまだ未知の世界ですね。初舞台が20代になってからでしたから、自分では遅い舞台デビューだったと思っています。初めての舞台を踏む前は、舞台は怖いもので自分には無理だと思い込んでいました。でも、出来の良し悪しはともかく、やり遂げられたという経験が自信につながって、少しずつ楽しみを見出だせるようになってきたとは思います。まだまだ経験も浅いので、今も緊張や不安の方がどちらかと言うと多いです。ただ、舞台ではお客様の反応をダイレクトに感じられますから、今度はちょっとこういう言い方をしてみようかなとか、遊び心が芽生える瞬間があるんです。そんなときに舞台の面白さ、楽しさを感じます。

過去3作の演出は、すべて蜷川幸雄さんでした。どんなことが印象に残っていますか?

私が臆病になっていることを蜷川さんが耳にされていたみたいで、初めてお会いしたときに「怖くないよ」と、すごく安心させてくださったことをよく覚えています。舞台稽古が始まっても、私が初舞台だということに配慮してくださって「楽しむように」と声をかけてくださいました。おそらく演出をつけるというようなレベルではなかったからだと思うのですが、目が合うと「大丈夫、楽しんで!舞台を嫌いにならないで」と、いつも言ってくださいました。

10代の頃に映画「バトル・ロワイアル」「キル・ビル Vol.1」などの話題作に出演し、鮮烈な印象を残されました。多くの人に根づいたそのイメージについて、ご自身はどのように感じていらっしゃいますか?

「バトル・ロワイアル」や「キル・ビル」は、個人的に私が好きなジャンルの映画です。自分が本当に好きだと思える作品に参加できるのはとても嬉しいことですし、だからこそ皆さんが受け入れてくださるような表現ができたのではないかと思っています。もしかしたら今でもその印象を持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、それは嬉しいことです。自分自身は本当に普通ですし、皆さんが思ってくださっているような強い人間ではないんですね。だから、映画で演じたような強い女性に憧れる部分もあります。皆さんが、そうした女性像と私を重ねて見てくださっているのであれば光栄ですね。ただ、無理してそう見せたいと思っているわけではないんです。もともと緊張しやすいタイプで、今でもそれは変わりません。でも、経験を重ねるうちに緊張の度合いが少しずつ緩和されていくのと比例して、個性的な役だけでなくさまざまな役をいただく機会が徐々に増えてきました。背伸びしていない私も見ていただく機会が増えて、嬉しく思っています。最近は、同じ監督さんやスタッフさんと二度、三度とご一緒させていただくことも多くなってきました。そういう方々は本来の私をご存知ですから、今までの役と違う面を見せたいと思ってくださるのかもしれません。これからも、いただけるチャンスにしっかり応えられるよう頑張りたいですね。

◎Interview & Text/稲葉敦子



10/5 THURSDAY
「ミッドナイト・イン・バリ」
チケット発売中
◎脚本/岡田惠和
◎演出/深川栄洋
◎出演/栗山千明、溝端淳平、浅田美代子、中村雅俊
■会場/愛知県芸術劇場 大ホール
■料金(税込)/S¥9,500 A¥8,500
■お問合せ/CBCテレビ事業部 TEL.052-241-8118(平日10:00〜18:00)
※未就学児入場不可