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清水ミチコのシミズム

駅の構内でスタッフと待ち合わせをしてた時のこと。
サラリーマンらしき男性が、
何かつまらないことでもあったのでしょうか、
電話を切りながら、悔しそうな顔で、
おもむろにビールをプシュッと開け、
ぐいっと飲んでました。朝ですよ。朝。
そのステバチ気味な飲みっぷりが、
私の目になんとも切なく飛び込んできて、
その姿が一日中マブタにチラつきました。
見ず知らずの人間に、
「お兄さん、ヤケを起こしちゃいけないよ」
とも言えないのは当然なのですが、
ふと声をかけたくなった一瞬でした。
たくさんの背中とすれ違う駅の中でも、
人はそれぞれいろいろな事情を抱えて生きているのだなあ、
と思った次第です。
いや、おそらく事情がない人生なんてないのでしょうね。
そんな翌週、能町みね子さんと対談をしました。
途中からなぜか「何が怖いか」という話題に。
私のオットはどういうワケか、
「魚のウロコの羅列があまりに綺麗だとゾッとする」らしく、
ともかく「自然界なのにキッチリしているデザイン」に、
得体のしれない畏怖を感じるらしいのです。
いったいどうして見たら、
あんな美しいものが不気味に思えるのか、
まったく謎です。
ついでに私の母は「何かがギッシリある」状態に
「ひいい~っ!」となります。
たとえば水玉模様がたくさん詰まったような洋服のデザインに
「ひいい~っ!ひいい~っ!」となる。
「ギッシリした、ミッチリした、
という言葉にすでに気持ち悪くなる」
とも漏らしてたことがあります。
能町さんは何が怖いか。
いったいどういうワケなんでしょうか。

「ゴム手袋が異様に怖い」んだそうです。
笑いました。
手術用の、透けたヤツならまだなんとかガマンできる。
けれど、あのしっかりした厚手の台所用の
ゴム手袋があるだけで、「ひいい~っ!」と
汗とともにあとずさりしたくなるんだそうです。
人間の脳っていったいどうなってるんでしょう。