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清水ミチコのシミズム

これを書いている年末は、前回も書きましたが
「国民の叔母・清水ミチコの『ババとロック』IN日本武道館」
に向けて、いろいろ準備をしてました。
どんなに貧しい時代でも、人は祭りの日を大切にしてきた。
それは、目標を持つことで気持ちをハレに向けることができるから、
といったような事を聞いた事がありますが、
確かに私も、毎日同じような日常の中で埋没しそうになったり、
空しくなるのを忘れるのには、
大きなイベントってすごくいいなあ、
目標って大事だなあ、と思いました。
ちなみに自殺の多い現代人は、
忙しいからこそメンタルが弱くなってるんじゃなくて、
昔よりも時間があるからこそ、くよくよ考えたり、
小さな努力がバカバカしく思えたりするんですってね。
ヒマができると(自分って何やってるんだろう…)など、
マイナス思考にもなりがち。
昔の女性は洗濯も炊事も手と水で行うのが当たり前でしたが、
今はスイッチポンだし、なのにそれすら面倒で
「出し入れもやってくれないかな」と思ってしまうのは、
ヒマが当然になってきたからで、
頭はそのヒマを感じると虚無感も感じだすと。
主婦が家事を終えて、やっと寝床で眠れる事に感謝していた時代は、
一日が無事に終わる事が目標であったのではないでしょうか。
お正月なんてのは、
当時の主婦にとってはうんと大事な行事だったでしょうねえ。
話がすっかりそれてしまいました。
それでも誰もが緊張する本番前。
「ババとロック」出演の私も、まわりの芸人さんも、
ミュージシャンの大物ですら、
やはり平静ではいられないものなのですが、
その中で一人だけ、いっこうにお構いなしの人間が。
それは椿鬼奴さん。
「ネタ、何分くらいできる?」と聞いた時も

「何分でもできます。いくらでも。」

と、あのしゃがれ声でおっとりと答えます。
「周りには『武道館お先です』って言ってきました。」
いったい強いのか、鈍いのか。天然なのか本物なのか。
これほど後輩が頼もしく感じたことはありません。