HOME > 土岐麻子「もちもち道中膝栗毛」 > Vol.16 たま麩とサモエド

土岐麻子「もちもち道中膝栗毛」

出会いは高崎市のスーパー。とあるポップの写真に釘付けになった。お椀にすっぽりハマるほどの大きな白い玉が、箸につままれてとろーりと伸びている。もちもちが好きな私も、餅どころ・岩手出身のマネージャーも、見た瞬間「あっ!!!」と声にならない声をあげてポップに飛びついた。籠には、手のひらほどの巨大な球体の焼き麩が袋に入って積んである。写真は、お麩が汁気を吸った状態のものらしい。重たげに伸びるその質感は「千と千尋…」で千尋のお父さんがずるん!と食べていた屋台メニューに似ている。この不思議な「たま麩」、麩屋藤という愛知県岡崎市の会社の商品で高崎の名物ではなかったものの、厳選された商品だけを扱うそれこそ高崎名物の「スーパーまるおか」のセレクトということで、私もマネージャーもお土産として買って帰った。
東京に戻ると、自宅の近所で散歩中のサモエド犬に会った。白くて大きな長毛犬で、人懐こい。だいたいのサモエドは喋ることもできる。たまに見かけるこの子も、家では一日中ワウワウガウガウ喋っているそうだ。その日も「アウー、ワウー、キューキューグルル」と、道端で飼い主さんを見上げながらなにかを訴えていた。たずねると「車に乗せてもらえると思ってたら歩きだったから、文句言ってるんですよ〜」とのこと。でも私に気付くと「えっこの人間ワタシに会いに来たの?」とばかりにハッとして擦り寄ってきた。長くて細い毛が深くびっしり生えていて、撫でるとふんわりもっちりした質感。癒された。
帰宅して、たま麩を開封。麩の底面に箸でぶすぶす穴を開け、お吸い物のお椀に浮かべて5分。出汁をよく吸ったたま麩はとろーんと伸びながらも溶けきらず、弾力感もある。ふんわりもっちり…さっきのサモエドを思い出す。そして熱い汁気を含んだ大きな麩というものはいくら早食いの私でも一気に食べることは出来ず、結果的にゆっくり味わうことになり、それも癒しとなった。サモエドは飼えないがしばらくはたま麩で癒されよう。ひと玉で約17.5キロカロリーなのもいい。
フレンチトースト風のレシピも見かけたが、私は今度オニオングラタンスープに入れてみたい。