HOME > 土岐麻子「もちもち道中膝栗毛」 > Vol.12 シフォンケーキ マリィ「タピオカ塩麹のシフォンケーキ」

土岐麻子「もちもち道中膝栗毛」

通学路を歩いていると、前方に2メートルほどの巨大なケーキがぷかぷかと浮かんでいる。倒れ込むように飛び乗ると、体はふかっと沈み込み、ワンバウンド。小麦粉とバニラエッセンスの甘い香りに包まれ眠り込む私を、ケーキのベッドが学校まで送り届けてくれる…という妄想を、毎朝のようにしていた。
貧血と低血圧で、とにかく朝がだるかったのだ。私にとって、夜に比べて朝の空気は鉄のように重い。
妄想のなかで迎えにきてくれるふわふわのベッドはケーキ以外にも、雲や綿飴になることもあった。

先日、博多の方から「作りたてだから今日中に食べてね」といただいた「マリィ」のシフォンケーキは理想の、いやそれ以上のベッドだった。ふわふわなだけではない。なんともちもちなのである。
焼き色のついた「ガワ」の部分は香ばしくほどよい硬さがあるが、きめ細やかな「ハラ」の部分は、かじるとふかふか。そしてそのあとは不思議に、少し伸びる感じがある。と思ったら、あっというまに口の中で溶けてしまうのだ。まるでとろとろのお餅のようなシフォンケーキ…この上で眠れたら、どんなに最高だろうか…。
包装をチェックすると「タピオカ塩麹」と書いてあるではないか。出たな!タピオカ!もちもちの現場にはタピオカが潜んでいることが多いのだ。

調べてみるとその日、博多駅でちょっと気になって立ち止まった店だった。確かに「タピオカ」という文字を目にした記憶があったものの、ケーキの他に台湾ドリンクがあるのかな?と思い立ち去ったのだ。低血圧で、朝は頭が回らないから…

それにしてもあの作りたてのもちもち感は究極なので、福岡に行く際はぜひお店で買って、そしてその日のうちに食べてみてほしい。ありがたいことにお取り寄せもできる。冷凍で届いて、4時間ほど自然解凍で極上の食感に出逢えるので、遠方の方はまずはこちらから!