HOME > MEGLOG【編集日記】 > <会見レポート!愛知県芸術劇場芸術監督・勅使川原三郎が佐東利穂子とともに、2022年度プロデュース公演2作品を語る。

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愛知県芸術劇場の芸術監督である勅使川原三郎が、9月に控える再演と新作、ふたつのダンス公演の記者会見を行った。会見には、ダンサーとして、また近年は振付家やアーティスティック・コラボレーターとしても勅使川原を支える佐東利穂子も参加。昨年の夏に好評を博した「風の又三郎」については再演の経緯や狙いなどを、「ダンス・コンサート」シリーズの最新作にあたる「ライヴミュージック&ダンス 天上の庭」については着想点や、世界的チェロ奏者ヨナタン・ローゼマンとの初共演に向けた心境などを聞かせてくれた。


勅使川原三郎 Photo by Akihito Abe

ダンス「風の又三郎」は地元・愛知のバレエ関係者との連携を図り、東海圏ゆかりの若手ダンサーを対象にオーディション・ワークショップを実施。2021年の夏休み期間にファミリー・プログラムの一つとして初演された。宮沢賢治の同名文学を題材にしたそのステージは、身体、音、光、舞台美術などが巧みに絡んだ美しい画の連続で観客を魅了。子どもと大人が分かち合える稀有な時間を生み出した。今年は9月3日(土)・4日(日)に公演。



【勅使川原三郎】
「風の又三郎」はすぐに再演の話が出たくらい成果が素晴らしかった。他の都市や外国にも持っていける作品です。ファミリー・プログラムだからと言って子どもに合わせることはせず、大人も子どもも共有すべきは何かと考えました。原作に描かれた出会いや戸惑い、喜び、発見、あるいは季節の変化と人生の転換期……、それらは誰もが感じ得ることですよね。再演にあたって、前回からのメンバーは1年で大きく成長したでしょうし、新しいメンバーは新しい風を吹き込んでくれるでしょう。大事なのは、愛知県芸術劇場が成長の場となることであり、地元の人がいかに参加できて、芸術を活性化できるのかということ。ダンサーたちとは「愛知でつくる作品」という誇りを共有しています。


佐東利穂子 Photo by Akihito Abe

【佐東利穂子】
「風の又三郎」は、あらためて名作だと思います。(舞台上に流れるナレーションとして原作の一部を)朗読していると、読むのが面白くて、なおさら生き生きとしていくのを感じます。目に見えているものだけでなく、まさに風、リズムが運ばれてくる。そしてある瞬間、子どもの頃に感じた淋しさや不安が深く感じられるのです。ダンスとの構成も合っているので、踊り続けていくことで作品を大きく豊かにしていけたらいいなと考えています。


風の又三郎初演風景(C)Naoshi Hatori

続いて16日(金)・17日(土)に発表される新作「天上の庭」には、勅使川原も出演。佐東とともに、フィンランドの若き俊英ローゼマンのチェロとじっくり向き合う。曲目はCMでもよく耳にするJ.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲」、カサド「無伴奏チェロ組曲」という二つの組曲からの楽章に加え、コダーイ「無伴奏チェロ・ソナタ Op.8」。特にストーリーはなく、音楽とダンスから成る純度の高いパフォーミングアーツだ。


勅使川原三郎、佐東利穂子 Photo by Bengt Wanselius

【勅使川原】
「天上」とは地上に対する言葉として、浮世から離れた世界を指しています。現在の難しい社会情勢の中で、私自身、日常の煩わしい話に飽き飽きしていて、物事が純粋にそのままあったらいいなという想いがあります。文学的なメッセージは一切なく、純粋に音楽とダンスで何ができるか追求したい。庭で遊ぶような、戯れるような、遊戯性をもった作品になると思います。ローゼマンは若手のほうですが、その人間性が表れたような穏やかな演奏には高い音楽性を感じます。私と佐東とローゼンマン、三人三様のあり方や音楽性がどう調和するか。チェロの音色は楽器の中でも人間の声に近いと言われ、形も近いので、もうひとり人間がいるような気もするんですね。大地と密接で、身体の奥底から響いてきて空間に広がる感覚。人間の身体と、より近いのは確かです。
【佐東】
ローゼマンとは初めてのコラボレーションですが、プログラムを考えている最中にリハーサルの機会を設けられたのは良かったと思っています。好き嫌いではなく、この三人ならば何があり得るか、ニュートラルに話ができましたから。彼の音楽を身体で感じている、全身で聞いているという感覚を得られたのも面白かったですね。生のチェロの演奏、チェロの曲だけで踊るのは初めてなので、今とても楽しみです。


ヨナタン・ローゼマン(チェロ) Photo by Tuomas Tenkane

なお、会見当日の朝にはローゼマンから佐東にメールが届いたそうで、「ここ数カ月、お二人に会う光栄を授かり、とても多くのインスピレーションを受けています。勅使川原さんの芸術に対する考えは啓示的で、私自身の考えも活気づき、ユニークで特別なものを創りたいという気持ちが増しています。このような想いは初めて」とコメント。刺激的な現場を共にして意欲を燃やしている様子がうかがえ、ますます期待が膨らんだ。

◎Interview&Text/小島祐未子








9/3 SATURDAY・9/4 SUNDAY
ダンス「風の又三郎」
愛知県芸術劇場芸術監督 勅使川原三郎 演出・振付
【チケット発売中】
■会場/愛知県芸術劇場大ホール
■開演/9月3日(土)・4日(日)15:00
■料金(税込)/全席指定 S席 ¥4,000(U25 ¥2,000・中学生以下 ¥1,000) A席 ¥3,000(U25 ¥2,000・中学生以下 ¥1,000)
※3歳以下入場不可。

9/16 FRIDAY・9/17 SATURDAY
勅使川原三郎 ライヴミュージック&ダンス「天上の庭」
【チケット発売中】
■会場/愛知県芸術劇場コンサートホール
■開演/9月16日(金)19:00、17日(土)16:00
■料金(税込)/全席指定 S席 ¥7,000(U25 ¥3,500) A席 ¥5,000(U25 ¥2,500)
※未就学児入場不可。

■お問合せ/愛知県芸術劇場 TEL052-211-7552