HOME > MEGLOG【編集日記】 > <舞台挨拶レポート!>映画『his』 宮沢氷魚さん、藤原季節さん

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映画「his」が1/24(金)に公開になりました。
今回は、主演の宮沢氷魚と藤原季節が登壇した名古屋舞台挨拶をレポートします。

映画「his」は、1/17(金)に公開された田中圭主演の映画「mellow」に続き、今泉力哉監督の2週連続の公開作。“恋愛映画の旗手”とも呼ばれ、「パンとバスと2度目のハツコイ」「愛がなんだ」「アイネクライネナハトムジーク」など、きめ細やかな恋愛描写で定評のある今泉監督が今回描くのは、男性同士の恋愛。

メ~テレで2019年4月から放送された連続ドラマ「his~恋するつもりなんてなかった~」を前日譚に、大人になった主人公・井川迅を宮沢氷魚が、日比野渚を藤原季節が演じる。入り口はLGBTQをテーマにした恋愛映画だが、観終わった時の印象はかなり違う。
宮沢:違いますね。僕たちの人生に関わってくれている人間すべての物語です。やはり人間一人では生きていけない。どんなに自分をよく見せて、一人でも生きていけるって信じ込んだとしても、他の人の力で自分の人生も進んでいくんだなと思ったし、今回は迅にとっては渚や空(渚の娘)であって、皆に支えられて生きているんだなと思いました。

迅は、ゲイであることを周りに知られないように、東京の会社を辞め、岐阜県白川町に移住し自給自足の生活をしている。そんな迅の前に、8年前に突然別れを告げ去っていった渚が6歳の娘・空を連れ現れるところから物語は始まる。この役を演じるのに二人は全く迷いはなかったという。
宮沢:プレッシャーはありましたし、映画初主演というのもあり、色んな意味で重圧を感じていたんですけど、それに勝る、この作品に参加できる喜びだったり、この時代に出来るという喜びがプレッシャーを全部打ち消してくれて、前向きに取り組むことができました。
藤原:自分が無知だったということもあると思う。今になってこの時の自分の価値観がいかに一方通行なものであったかと考えると心が痛いです。今でも葛藤しています。僕も氷魚くんも世間のニュースやテレビの色んな言葉に敏感になって、もしこの言葉を聞いたら迅は傷つくだろうなとか、センサーを自分の中で持つことができるようになった。そこは一歩成長したかな。100%理解できない自分を責めるのではなく、自分が26年間で培ってきた当たり前という価値観や自分のことも受け入れて、無理に自分の価値観を変えようとするのではなく、こういう考え方もあるんだなという風に発見できただけでも、今は良しとするか、と折り合いをつけています。


白川町の撮影では10日間二人でコテージに寝泊まりした。衣装合わせで会っただけで、会うのは2回目で共同生活をするのは「嫌だった」と話したが、精神的に追い詰められる撮影の中で、互いの存在に助けられた。
藤原:僕は氷魚くんと10日間暮らした後に、東京編で裁判のシーンの撮影があったんです。今泉監督からも、“東京の渚の顔は全然違う”と言われました。やはり、迅という存在がいないと、ここまで渚は変わってきちゃうんだなと思いました。

また、宮沢はLGBTQの友人がいるということで映画「his」に込めた思いを語った。
宮沢:この映画に参加させてもらって、この映画が答えではないと思うし、この映画が世に出ることによって現状が大きく変わるかって聞かれたら、たぶん変わらない。でも考えるきっかけになってくれたらいいなと。こういう人間が居て、当たり前というか、普通って何なんだろうって、普通なんてものが存在するんだろうかって、自分に問う時間が10分でも、それ以上だと嬉しいですけど、あると嬉しいなと思います。

キャストは、渚と離婚調停中の妻に松本若菜、迅の移住をサポートする町役場の職員を松本穂香、迅と渚を見守る白川町の住民を、ミュージシャンの鈴木慶一、根岸季衣が演じている。ラストシーンの余韻の中流れる、書下ろしの主題歌「マリアロード」が、映画「his」の心に残るセリフや温かさをより深めてくれます。

◎取材・文/神取恭子

1/24 FRIDAY〜 名古屋・伏見ミリオン座、他全国ロードショー
映画「his」
◎監督:今泉力哉 ◎主演:宮沢氷魚、藤原季節
◎配給・宣伝:ファントム・フィルム
◎製作:2020映画「his」製作委員会