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SPECIAL INTERVIEW


今年も「マツケンサンバ」で楽しく元気に!デビュー以来の様々な思いを語る。


「松平健」スペシャルインタビュー
取材日:2025.12.07


いまや世代を越えて熱狂を巻き起こすコンサートが定番のマツケンこと松平健。
その発端となったのが、2004年に大ブームを巻き起こした
名曲「マツケンサンバⅡ」。
もともと舞台のフィナーレで“笑顔で帰っていただく”ために生まれた一曲だったが、
コロナ禍を機に始めたYouTubeやSNSも追い風となり、再ブームが加速。
2026年も「松平健 マツケンサンバコンサート2026」で全国に元気を届ける松平に、
振付師・真島茂樹さんへの思いや役者を志した原点などを聞いた。


精力的にコンサート活動を続けていらっしゃいます。各地でのお客様のご様子はいかがでしょうか?

最近は若いお客様が増え、まるでアイドルのコンサートのように大変盛り上がっております。

松平さんがコンサートを続けるモチベーションを教えてください。

ステージに立ちお客様の声援や拍手を頂けると、とてもエネルギーになり頑張れております。私も楽しんでステージに立たせていただいております。


2004年にリリースされ、一大ブームを巻き起こした「マツケンサンバⅡ」。まずはこの曲が生まれた経緯を教えてください。

私の舞台公演の構成は一部芝居、二部歌謡ショーとなっており、「マツケンサンバⅡ」は舞台のフィナーレの曲として、お客様に楽しい気持ちでお帰りいただくために作りました。「松健音頭」「マツケンマンボ」等を経て、1994年から歌っている曲です。

20年近く経って再びブームとなっていることを、どのように感じていますか。

20年前に聴かれた方は懐かしく、知らなかった世代の方からは楽しく元気になれるという声を聴いて大変嬉しく思っています。今後も「マツケン」シリーズの曲は歌い続けていきたいと思っております。

2020年のコロナ禍でYouTubeやSNSを始められたことが今回の再ブームのきっかけにもなっていると思います。始めたきっかけや現在の心境などをお聞かせください。

コロナ禍で仕事がなくファンの皆様に会う機会もありませんでしたので、動画を見ていただきたくYouTubeを始めました。企画は試行錯誤しながらですが、素に近いリラックスした気持ちで撮影しております。「マツケンサンバ」の再ブームも、動画やSNSの影響は大きいと思います。若い方の反響が多く、私自身も驚いております。


煌びやかな衣装をまとって踊る姿と、俳優・松平健のイメージとのギャップに驚く方もいるようですが、松平さんご自身はどう感じていますか。

『暴れん坊将軍』のイメージが強かった方はギャップを感じられる方もいらっしゃいますね。舞台では以前からやっていたので自分としては違和感はありません。

一方で、振付師の真島茂樹さんがお亡くなりになって1年以上が経ちました。今、改めて真島さんへの思いをお聞かせください。

劇団の頃から親交がありましたので、突然いなくなったときは本当にショックでした。今もコンサートではマジが振りつけてくれた踊りを大切に継続しておりますが、改めて素晴らしいものを残してくれたと感謝しています。

松平さんが役者を志すきっかけとなった出来事は何かございましたか?

まだ豊橋にいる頃、日活映画が好きでよく映画館に通っていたのですが、その際に観た石原裕次郎さんの主演映画『太平洋ひとりぼっち』に感化され、役者を目指し上京を決めました。

勝新太郎さんの事務所に所属されていたとのことで、当時のエピソードをお聞かせください。

立ち回りのスピード感は、師匠のそばで見ていて学ばせて頂きました。また、師匠はお客様もスタッフも周りの人を楽しませる方でしたので、そのことは常に胸に抱いております。また、「打った矢は努力しないと落ちる」という師匠の言葉は、いつも胸に秘めております。

時代劇ならではの良さ、楽しめるポイントなど、見る側の私たちに教えていただけますか?

時代劇は日本の文化です。着物での生活、髪形も町人と武士では違いますし、時代劇特有の人情話が盛り込まれています。またお馴染みになりますが、最後は立ち回りで悪人を退治してすっきりした気持ちになれるのが魅力かと思います。

デビューから50年以上過ぎましたが。若さを保つ秘訣を教えてください。

特に秘訣はありませんが、お客様に喜んでもらいたい気持ちと、逆にお客様からエネルギーをいただいていると思います。健康管理は一般的ですが、バランスの良い食事、睡眠時間、軽い運動を心掛けております。特にウォーキングは続けております。

愛知・武豊公演が6月にございます。武豊町や知多周辺、そして故郷の豊橋の思い出を教えてください。

知多半島を通って篠島、日間賀島へは数回伺ったことがあります。豊橋は、やはり両親と過ごした思い出が一番印象に残っております。

◎Interview&Text/岩本和子
◎Photo/安田慎一(STUDIO.SHIN)



6/13 SATURDAY
「松平健 マツケンサンバコンサート 2026」
■会場/ゆめたろうプラザ 輝きホール
■開演/[1回目]13:00 [2回目]16:00
■料金(税込)/全席指定 ゆめプラメイト¥7,000(当日¥8,000)
一般¥7,500(当日¥8,000)
学生(小中高生)¥3,500(当日¥4,000)
■お問合せ/ゆめたろうプラザ(武豊町民会館)TEL.0569-74-1211



時代劇の決定版『忠臣蔵』大石内蔵助を演じる心境を語る。


「上川隆也」スペシャルインタビュー
取材日:2025.11.07


赤穂浪士たちの義と葛藤と信念を描く時代劇の決定版、舞台『忠臣蔵』。
大石内蔵助を演じる上川隆也は、ゆかりの地である赤穂を訪ね、
土地の空気を全身で受け止めたという。
上川は「大石内蔵助という役を纏う側だからこそ、
分析を二の次にして、没入したい」と静かに意気込む。


赤穂の大石神社や城跡を訪ねられたそうですが、いかがでしたか?

僕が一番感銘を受けたのは、心地いいばかりに広がっていた平野でした。背後には山をたたえて、眼前には海が迫っており、その間に千種川が作り出した三角州がある。間違いなく豊穣な土地であったでしょうし、そこに住む人々がその土地を愛するであろう条件が十二分に詰まっていたように感じました。だからこそ、純粋に家臣もそこを治める殿を愛せたでしょうし、こうした物語につながるような人間関係が作られる土壌がそこにあっただろうと疑いなく思えるような場所でした。今回、伺った上でそれが何よりも大きな収穫でした。

演出が堤幸彦さん、脚本は鈴木哲也さん。この舞台『忠臣蔵』は、どんな作品になるでしょうか?

誤解を恐れずに申し上げるならば、この物語が他と一味違う形で描かれることは間違いないと思います。その要素のひとつが、高橋克典さんが演じる吉良上野介という存在です。「人である吉良上野介が、そこにいてもいいのではないか」という視点が盛り込まれています。それだけに、スタンダードに、真っ当に『忠臣蔵』を描いていきながらも、観客の皆さんにまた新たなものをお届けできるのではないかという確信があります。

大石内蔵助の主演オファーを受けたときのお気持ちを教えてください。

驚きました。これまで『忠臣蔵』にまつわる2つの映像作品に参加しましたが、自分に大石内蔵助のお鉢が回ってくるとは思っておりませんでした。同時に、ありがたいとも思いました。悲しいかな、映像作品の1回目は浅野内匠頭、2回目は寺坂吉右衛門と、どちらも討ち入りの最後までを見届けられない人物でした。なので、今回はその一部始終をきちんと見届けたいと思っています。


大石内蔵助を演じるにあたって「分析は二の次、没入したい」とおっしゃっていましたが、その真意を聞かせてください。

「分析」という言葉を使いましたけれども、もう少し言葉を紡ぎますと、「決め込んで臨まない」という言い方が一番当たっているかと思います。例えば、Aという人物を演じるにあたって、台本のさまざまな局面で「このように動くだろう」「このようなしゃべり方をするだろう」と決め込んでいても、相手役と噛み合わなかったら意味がないんですね。今回は内蔵助の妻を藤原紀香さんが務めてくださいますが、紀香さんとの会話の中で大石内蔵助という人物に感じたものを盛り込んでいきたいと思います。

堤さんといえば立ち回りが印象的ですが、殺陣についてはどう捉えていますか?

覚悟はしております。ですが、堤さんが演出された『魔界転生』に比べると、その質も随分と違うものとして描かれていますし、また違った立ち回りをお届けできるのではないかと思っています。

妻・りくを藤原紀香さんが演じられますね。

りくという、本当に身を切り裂かれるような思いに苛まれる人物を今の藤原さんが演じたらどうなるだろうという期待しかありません。期待というと失礼かもしれませんが、その想像力をかき立てられる紀香さんのお人柄への確信は、揺るぎようがありません。


『忠臣蔵』が300年以上も人々の心をつかみ続けている理由は、どこにあると思われますか?

僕は「至極単純だから」というふうに理解しています。と申しますのは、「誰かを大事にした物語」だからです。親が子を愛するように、誰かが誰かを大事だと思う気持ちが誰にでもあるように、大石内蔵助が率いた人々の行動には、時代を問わずに共感できる要素がそこにあるからだと思うんです。政治のことはとんと明るくはありませんが、それでも折に触れて悲惨な映像などが目に触れることもないわけではない。その悲痛な声は時代を問うものではないと思うんです。大石たちは、そうした声を上げはしませんでしたが、心の中に渦巻いていたものは間違いなく今と通底するものでしょう。だからこそ『忠臣蔵』を令和の世にお届けしても、何かを感じていただけるだろうと思います。

『忠臣蔵』に触れる機会のない若い世代も多いと思います。今回の舞台は、そうした世代にもどんなふうに届いてほしいと思われますか?

なかなかお目にかかる機会の少なくなってしまった物語だと僕も思っています。だからこそ、今、上演して皆さまのお目に触れることには意味があると思っています。今回のお話をお受けしたときの「ありがたさ」というのは、そこも含まれるように思います。

最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします。

演出の堤さんもおっしゃっているように、真っ当にこの物語に携わりながら、それでもこれまでにない観点を盛り込んでお届けする『忠臣蔵』になると思います。物語をご存じの方も、今回初めて触れる方々にも楽しんでいただけるような舞台をお届けしたいと思っております。ぜひ劇場まで足をお運びください。よろしくお願いいたします。

◎Interview&Text/岩本和子
◎Photo/安田慎一



1/24 SATURDAY~27 TUESDAY
「忠臣蔵」
■会場/梅田芸術劇場メインホール
■開演/1月24日(土)12:00、17:00 1月25日(日)・26日(月)13:00 1月27日(火)12:00
■料金(税込)/全席指定[平日]S¥15,000 A¥10,000 B¥5,500
[土日]S¥16,000 A¥10,000 B¥6,000
■お問合せ/梅田芸術劇場 TEL.0570-077-039(10:00~13:00、14:00~18:00)



大活躍の森田望智が待望の初舞台で目指す、役作りと身体表現。


「森田望智」スペシャルインタビュー
取材日:2025.11.09


朝ドラ『虎に翼』、夜ドラ『いつか、無重力の宙で』、
映画『シティハンター』など、
注目の映像作品への出演が続いている。
「これまでのご縁がつながってきて、ありがたい気持ちでいっぱい」
と語る森田望智の活躍が、舞台へも広がった。
初舞台作品『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』で
愛知へやってくる。


舞台『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』が森田さんにとって初舞台となります。

ずっと舞台に出てみたいという気持ちがありました。映像と違って舞台は、最初から順番に流れでお芝居をし、何度も繰り返し演じられる。だから、お芝居の密度が増すのではないかな、本当にその役を生きることができるんじゃないかなというイメージが自分のなかにあって。ようやくそのときが来たんだなとワクワクしています。


初めての舞台が、村上春樹さんの原作を舞台化した作品となったことはいかがですか。

村上春樹さんの作品は、どんな物語としても受け取れるものが多くあり、まさにいろいろなことを探求させていただける貴重な場になるのではないかと感じています。なかでも、この『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は、村上春樹さんならではのファンタジーの要素もありつつ、自分のリアルとすごく結びつく感覚があって。「この現実世界も“世界の終り”というもう一つの世界につながっているのではないか」と思えたり、「現実だと思っているこの世界は本当にリアルですか」と問われている気持ちになったり、世界の捉え方や生き方の可能性が広がるようなお話だなと感じています。物語に入り込みながら、いろいろ考えることができる舞台になるのではないかなと。私自身は、エンターテインメントとして楽しめる作品も、難解なものもどちらも好きなのですけど、その二つの魅力がバランスよく目指せる作品になりそうだなという気もしています。


演出・振付を手がけるフィリップ・ドゥクフレさんは、シルク・ドゥ・ソレイユなどで作品を創作し、日本でも、『DORA〜100万回生きたねこ〜』(96年)、『Iris』(03年)、楳図かずお原作のミュージカル『わたしは真悟』(16年)で身体表現を取り入れた舞台づくりをされています。動きのあるエンターテインメントになると推測しますが、森田さんも、バレエとフィギュアスケートの経験が活かせそうですね。

今年、『氷艶hyoen2025 ─鏡紋の夜叉─』でスケートをしながらお芝居をしたときに、お芝居の気持ちを引きずり過ぎてしまうと、動きが小さくなってしまったりして思うように踊れないということがあったんです。だから、今回、踊ることになるのかまだわからないですが、心と身体と音楽が上手く全部つながるところを目指したいなと思っています。宮尾俊太郎さんをはじめプロのダンサーの方々とご一緒できるので、新しい景色をいただけるのではないかと思っており、とても楽しみにしています。

演じられるのは、“ハードボイルド・ワンダーランド”の司書と“世界の終り”の彼女になります。

“世界の終り”の登場人物たちは、藤原竜也さんが演じられる主人公にとっては、“ハードボイルド〜”のほうの人物が夢に出てきているようなイメージなのかなと思っています。なので、“世界の終り”の女の子は演じ方の幅が広いといいますか、演じるたびに発見があって変化していくのかなと。そして“ハードボイルド〜”の司書も、地に足の着いた自立した女性ではあると思うんですけど、主人公は彼女の内面の印象を“世界の終り”の彼女に反映させていると思うので、掘り下げていくほど発見があるのではないかと思うんです。とにかく、どちらも魅力的な人物になるといいなと思っています。

藤原竜也さんとは初共演。どんなことを楽しみにしていますか。

これまで拝見していて、お芝居に向ける情熱がとても強く、お芝居を心から愛していらっしゃる方なんだなと感じていました。だから、技術的なことももちろんですが、まずその姿勢や気持ちから多くを感じ取らせていただけるのではないかと思っています。あの内から放たれるエネルギーは、きっと、普段の人生を色濃く生きていらっしゃるからこそ生まれるものだと思いますし、人として学ぶべきことが本当に多いと感じます。

どんな人になりたいと思っていらっしゃるのですか。

ちゃんと日常を幸せに生きていたいと思っています。ちゃんとご飯を食べて、寝て、バスに乗って、電車に乗って、人と会って、お話して。それがきっと、演じる役にもつながると思います。役は自分とは別人ですが、どう捉えてどう表現するか、ああかなこうかなと考えるのは自分で、自分が豊かじゃないとその役も豊かにならない気がしています。日々を大切に、明日死ぬかもしれないと思って、今日を一生懸命生きられるような人になりたいです。と思っていてもなかなかそうはいかないんですけどね(笑)。人間ってそういうものですけど、でも、少なくとも、日々ありがたみを感じながら過ごせる人でありたいです。

◎Interview&Text/大内弓子
◎Photo/安田慎一(STUDIO.SHIN)
◎Makeup&Hairstyling/佐川理佳
◎Stylist/トリイクニコ



2/13 FRIDAY〜15 SUNDAY
舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」
■会場/名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館) 大ホール
■開演/2月13日(金)13:30
2月14日(土)12:30、17:30
2月15日(日)12:30
■料金(税込)/全席指定¥13,000 車椅子席¥13,000 U25¥6,500
■お問合せ/メ~テレ事業 TEL.052-331-9966(平日10:00~18:00)



フラメンコや日本舞踊、さらに能楽の要素を融合した『恋は魔術師』を語る。


「野村萬斎」スペシャルインタビュー
取材日:2025.09.30


狂言・能のみならず、現代劇や映像で俳優として活躍。
演出家としても数多くの舞台を手がけている鬼才が
室内楽の名門オーケストラ・アンサンブル金沢を率いてフェニーチェ堺に初登場。
プログラムの目玉として、ファリャのバレエ音楽《恋は魔術師》を
フラメンコや日本舞踊、能楽の要素と融合した音楽劇として届ける。


2021年より石川県立音楽堂の邦楽監督、2024年よりアーティスティック・クリエイティブ・ディレクター(芸術監督)を務められています。《恋は魔術師》は同音楽堂のレジデントオーケストラであるオーケストラ・アンサンブル金沢とのコラボで、新しい舞台をプロジェクト「MANSAICREATIONBOX〜萬斎のおもちゃ箱」の第2弾として2024年の2月に上演されたものですね。

2022年の第1弾でラヴェルの《ボレロ》をとりあげて好評をいただき、次も舞曲的なものを考えていたところ、以前からスペインのフラメンコと日本の古典芸能に共通点があると感じていたのを思い出しました。ひとりのダンサーをとり囲んで周りが手拍子や足踏みで“気”を送る様子は、能楽で登場人物を「謡」と「囃子」で盛り上げるのに似ています。そんな時にシスティーナ歌舞伎の『GOEMON』でスペインの音楽にあわせて踊る中村壱太郎さんの動画をYouTubeで拝見して、これだ!と思った。それで彼に日本舞踊の振付と出演をお願いして、一緒に音楽劇《恋は魔術師》の舞台を作り上げていったのです。


1幕のバレエ音楽としてファリャが作曲した《恋は魔術師》は、スペインの南部・アンダルシア地方の民族的な特色をとりいれたドラマティックな音楽(※オーケストラにメゾ・ソプラノの独唱が加わっているのが特徴)にのせて、男女の愛憎劇が展開します。「萬斎のおもちゃ箱」版では、夫を亡くした若いジプシー女カンデーラの役を、壱太郎さんとメゾ・ソプラノの秋本悠希さんの二人が(身体表現と内面の声として)分担して演じ、萬斎さんは亡き夫の亡霊として出演。その嫉妬深い亡霊を誘惑してほしいとカンデーラが依頼した美しい女友だちルシーアの役を、これも壱太郎さんが演じられていたのが面白いと思いました。

やはり生きた人間の役は歌舞伎の方に任せて、霊的存在は能楽にはお馴染みの表現形式ですので、私が演じることで夫の亡霊により実感を持たせることができると考えました。前回は中村壱太郎さんがカンデーラとルシーアの二役を歌舞伎的な早変わりで見せる効果などをねらいましたが、そのあたりが少しわかりづらかったという意見もありましたので、今回はカンデーラ役を(二代目)花柳ツルさん、ルシーア役をスパニッシュ・ダンサーの工藤朋子さんで演じ分けてもらうことにしました。ツルさんは藝大時代に私の授業を受講してくれていた教え子ですが、工藤さんとは今回が初めて。彼女には着物で踊っていただいて日本的なものに寄せてもらいつつ、逆に我々は彼女からフラメンコ的な要素をたっぷり吸収して、それらを融合した新感覚の舞台を皆さんにお届けしたいと思っています。

今回、壱太郎さんは日本舞踊家の花柳源九郎さんと共同で振付に専念されるとのことで大いに楽しみにしております。前回も《恋は魔術師》最大の山場である、悪霊を追い払うためにジプシーが火を焚いて踊る有名な〈火祭りの踊り〉の場面での、さらしを使った日本的な炎の表現がとても素晴らしかったです!

大がかりなセットはないけれど、伝統的な小道具を駆使して魅せます。元々ファリャの音楽自体がイマジネーション豊かなので、そこに新しい要素を加えて更に輝かせたい。オーケストラはピットに沈めず、何よりもオーケストラと我々ががっぷり四つに組んだ最高のステージを、フェニーチェ堺のお客さんにも堪能していただくつもりです。

なるほど、オーケストラ・アンサンブル金沢もまた“主役”ということですね。

そうです! 能舞台も音楽の部分を担う「囃子方」がいることで成り立っています。笛はこの方向から、鼓は下から、大鼓は上から…と全部のベクトルがぴったりとハマるように設定されているので、「囃子方」がお客さんから見えていることが重要なのです。だからオーケストラが存在感たっぷりで舞台上にいるのは私としては大歓迎。邦楽の世界には指揮者のような人がいないので、いつもは各々が舞台に集中することで成り立っているのですが、ここではマエストロとしっかり息を合わせて進行させて行きたい。情熱的なスパニッシュ音楽と伝統芸能が誇る“幽玄”の世界が織りなす、誰も観たことのない音楽劇にどうぞご期待ください。お待ちしております。

◎Interview&Text/東端哲也
◎Photo/安田慎一



12/13 SATURDAY
野村萬斎 with オーケストラ・アンサンブル金沢
ファリャ「恋は魔術師」

■会場/フェニーチェ堺 大ホール
■開演/14:00
■料金(税込)/全席指定 S¥6,500 A¥4,800 B¥3,800
■お問合せ/フェニーチェ堺(堺市民芸術文化ホール)TEL.072-223-1000



詩魂を込めた歌づくりからステージのクリエイティブ。
“長渕の今”を語る


「長渕剛」スペシャルインタビュー
取材日:2025.07.14


この秋、全国4都市でのアリーナツアーを控えた長渕剛のインタビューが実現。
多くのオーディエンスを熱狂させるステージのクリエイティブ、
詩魂を込めた歌づくり、若いアーティストへの思いなど、
さまざまに語られた真摯なメッセージから、“長渕剛の今”を届けます。


全国ホールツアーが7月にファイナルを迎えましたね。

延べ7万人の方とお会いしたわけですけど、これまでにない熱狂でした。ツアータイトルにもなった「HOPE」は、怒りを源泉とした歌です。世の中みんな、怒りを内包しているという感覚がすごくあったので。みんなで拳を上げて歌うというシンプルな図式ができました。照明などの演出も、観客の熱狂に拍車をかけたと思っています。

ステージの演出も長渕さんが手がけていらっしゃるのですか?

全部やります。僕は新人の頃から。もちろんスタッフの方もいらっしゃるんだけど、観客が求めるものへの認識に相違があると、歌に込めている思いが届かない場合があるんです。だから、プランナーの土台をもとにディスカッションしながら一緒に創ります。照明だけじゃなく、PA、モニター、大道具…各部門のチーフたちが関わり合って、演出コンセプトからズレていないか確認しながら進めていくんです。分業制じゃないんですよ、うちは。感性は分業じゃできないので。僕のチームには誇りを持っています。

ステージの演出は、歌のメッセージとリンクさせてプランニングされるのでしょうか。

そうですね。根幹にあるのは「この歌を一体どう届けるのか」ということで、演出家やミュージシャンのエゴは一切許さない。「見せる、聴かせる、感動させる」という要素は、来てくれたお客さんがジェットコースターに乗っているように揺さぶられて飽きないようにするためにあります。そして最終的に会場から出たときに、みんなが自分の人生を肯定して、「よかったな。明日も頑張るぞ」という気持ちになってほしい。だから客の顔を見ればわかりますよね、僕たちの演出が外れてるか、間違ってないかっていうのは。


長渕さんのステージに観客が求めているのは、どんなことですか?

現実逃避ですね。「日常から解放してくれ、長渕」って。ネガティブな要素ばっかりの日常から解き放って、俺たちを気分良くさせてくれと。それでも頑張って生きてるってことを肯定してくれねえか、という、なんか集会のような気がします。俺もそう。そのために歌を作り、照明があり、音響がある…という感じです。僕が観客に求めるのは、「正直になろうぜ」ってこと。全部あけっぴろげに自分を解放して、何も残ってないぐらいに燃焼してこの会場を出ていってくれ、と。だから僕は、2時間以上のステージをやりきった後、楽屋に帰らないで、しばらく客を見ます。その背中に、もしも不満があったら、また出ていくときありますから。「おーい、待ってろ、やるぞ!」って(笑)。不満そうなあいつをもう一回振り向かせて、拳を上げて「よーし」っつって帰してやるぞっていう。みんな高いお金を払ってシートを獲得するわけですから、そこに嘘はなかったという生き方をしてきました。

配信サービスが主流になった今、生で音楽を聴くことの価値が高まっていると感じています。ライブを長年続けてこられて、何か変化を感じますか?

ライブをやり始めて47年。もうすぐ50年経つと思うと、自分でもゾッとします。その変遷を見ても、基本的なライブの価値観って変わらないです。変わるはずがないんですよ、人の呼吸とか肌のぬくもりとか。声帯が震えて波動となって、歌は人の耳から心に忍び込みますから。それは当然、デジタルでは表現できない。そういった意味では、エンターテインメントの世界で演者に求められるものは厳しくなりますよね。数年で消えてしまう演者は多いです。もったいないですよね。彼らを取り巻く環境も、例えば反骨の魂とか、そういうものを良しとして育てていくムードが希薄なんです。昔は、次の世代に芽吹いてくる反骨の芽を摘まないでおこうという空気が業界全体にありました。テレビ局にもラジオ局にも、そういうプロデューサーがたくさんいらっしゃって。今、そんな空気が薄くなっていることは、大きな損失だと思います。


若いミュージシャンを育てる土壌がなくなっていると。

ミュージシャンだけじゃないですけどね。日本から優れた表現者が出にくくなるんじゃないかという危機感は、すごく感じます。表現の根本は、若いときの破壊衝動なんですよ。今までの表現が気に入らないわけだから。時代の変革期において存在感を示すのは、実は大衆芸術なんです。ロックとかフォークとか。歌の持つエネルギーとか歌う人の心の中にある考え方、そういうものが変革のきっかけとなって、その後から政治がついてくる感じがします。僕は、あんまりそういうことを考えて歌を書いてきませんでしたが。振り返るとバブルの頃に「国会議事堂にしょんべんひっかけて」なんて歌ってみたりしましたけど。ラブソングは必要だけれども、アンチテーゼの歌も絶対必要です。その代わり、石を投げたら投げられますから。それを覚悟しなきゃいけない。

長渕さんの歌からは、世の中に対する問いが感じられます。

そういうものは投影していますね。生きてくなかで、苦しみとか怒りとか、——秋から始まるアリーナツアーでも、長渕さんの詩魂を体感したいです。名古屋公演は11月ですね。名古屋の思い出はいっぱいあります。20代の頃、味噌煮込みうどんの山本屋に初めて行ったときのこと。ガラガラっと引き戸を開けて暖簾くぐると土間があって、厨房からものすごい蒸気が出てるんですよ。女将さんが自分のおふくろみたいで、すごく親しみを感じて、よく通いましたね。「お母さん、うどん硬いね」「そう、うちは硬いのよ」って。僕の心の中に染み込んでる名古屋の風景と、あの女将さんの割烹着姿と、夏でも汗だくになってうどんを作ってらした店主の姿は、ずっと残ってますね。ライブはもう、一本一本が命がけです。油断のないステージをやりますんで、心して飛びかかってこい!(笑)。

◎Interview/福村明弘 ◎Text/稲葉敦子
◎Photo/安田慎一



11/15SATURDAY・16SUNDAY
「TSUYOSHI NAGABUCHI 7NIGHTS SPECIAL
in ARENA名古屋公演」

■会場/ポートメッセなごや 第1展示館
■開演/17:30
■料金(税込)/全席指定¥13,000
■お問合せ/キョードー東海 TEL.052-972-7466
      (月~金12:00~18:00 土10:00~13:00 日祝休み)



神戸の「あの時」を描いた舞台『明日を落としても』主演への思いを語った


「佐藤隆太」スペシャルインタビュー
取材日:2025.07.11


脚本をピンク地底人3号、
演出を栗山民也が務める舞台『明日を落としても』は、
阪神・淡路大震災から30年となる2025年と発災当時の1995年を巡る、
老舗旅館を舞台にした神戸の「あの時」の物語。
主演の佐藤隆太は、
「今、舞台に参加したいという思いが一層強くなっている」と明かす。


演じられる老舗旅館の社長・桐野雄介という人物は、どんなキャラクターでしょうか。

1995年当時の雄介は、何かに熱中することもなく、どこかふわふわとした25歳。そんな彼が、牧島輝くん演じる17歳の神崎ひかると出会い、ボクシングを通して真正面から向き合うことで、少しずつ前に進む力を取り戻していきます。物語では震災から30年後、55歳になった雄介も描かれます。25歳と55歳の彼をどう表現するのか、僕も今から楽しみにしているところです。

この物語のどういったところに惹かれましたか?

一人の人間が抱える痛みや傷に人生をかけて向き合っていく姿に心を打たれました。観客の皆様にも、ご自分の人生と照らし合わせて共感してもらえるではないかなと思います。静かに進む会話劇の中に、じんわりと心に染み入るような温かさがあり、素敵な作品だなと感じています。何より、栗山民也さんとまたご一緒できることがとても嬉しいです。

7年前、2018年に舞台「アンナ・クリスティ」で初めて栗山さんの演出を受けられました。そのご経験は、演劇や芝居に対して何か変化をもたらしましたか?

言葉にするのは難しいのですが…、役ではありますが、その人間の根底からセリフを放つ感覚をより大事にしたいというか、その役が放つエネルギー、生命力、そういったものをさらけ出して舞台に立つことを教わったように思います。栗山さんはそんなことを教えたつもりはないとおっしゃるかもしれませんが、僕は「アンナ・クリスティ」で演じたマット・バーク(篠原涼子演じるアンナ・クリスティに一目惚れする人物)というキャラクターや稽古場での時間から、そういったことを改めて強く思ったことを覚えています。

佐藤さんは映像作品も多く出演されていますが、舞台で演じることについて特別に意識されていることはありますか?

あまり意識はしないようにしています。ひとつの役を生きる、という点では基本的に舞台でも映像でもやるべきことは同じだと思っていて。あとはそれを見ていただいた演出家に委ねる部分が大きいです。そんな風にあえてシンプルに考えているというか。舞台という場所、お芝居をしている時間がとにかく好きです。映像作品も大好きですが、完成した作品を届けるという点では、どうしても一方通行になってしまいますよね。舞台は“生”のやり取りで、同じ芝居でも日々変化がある。それはその時に会場に集まってくださったお客様から発せられるエネルギーにも影響を受けていて、みんなで本番を作り上げているからで。双方通行のような感覚ですよね。そのライブ感がたまらなく好きなんです。自分が舞台上で演じる時も、観客として観に行く時も、すごく贅沢で豊かな時間だなと感じます。コロナ禍を経験して、なおさらそのありがたみを強く感じるようになりました。今はより一層、舞台に立ちたいという思いが強くなっています。


幕が下りると同時にその役も消えていくという儚さも、哀愁があるといいますか、何とも言えない寂しさを感じます。

□おっしゃる通りで、毎作品、大千穐楽のたびに「このセリフを言うのも今日が最後なんだな」と舞台上で意識しちゃうんですよね。こんなことを言うのは恥ずかしいですが、セリフを言った瞬間に、ファ〜って目の前で消えていく感覚があるんです。だから大千穐楽では「今まで何回も言ってきたけど、これが最後だから噛み締めて言おう」と好きなセリフに対して思うのですが、力みすぎちゃって噛む、みたいな(苦笑)。きれいに消えず、ぐしゃぐしゃってなって消えてゆく…そんな悔しい思いをすることもありますが、それも含めて舞台は本当に面白いです。

まさにライブですね。

あと、毎回、同じことをやりますが、その中で新しいものを見つけることも楽しみの一つです。

というのは?

本番の舞台上で、僕たちのエネルギーになるような新しいものを拾っていくというか…。まあいいや、照れくさいからこの話はやめよう(笑)。

そのお話、ぜひ聞きたいですね(笑)。

……舞台にパッと新しい花が咲くような感じです。稽古場やそれまでの本番で咲かなかったその花を見つけて摘み取ることで、また新鮮な気持ちで芝居を続けられるというか。どんなに細やかなことであっても、その日起こった良い変化を見逃さず、反応することで、勢いが増してゆく感覚。これも日々変化がある舞台だからこそですよね。

兵庫県立芸術文化センターには2024年の舞台「『GOOD』-善き人-」で初めて出演されましたが、ホールの印象はいかがでしたか?

ほんとに素敵な劇場です。音の響きもすごく良くて、客席との距離感もちょうどいい。包み込まれるような雰囲気があって、自然と気持ちも乗ってくるんですよね。舞台に立った瞬間「ひとつになれる」と感じられる劇場は、本当にワクワクします。

◎Interview&Text/岩本和子
◎Photo/来間孝司



10/11 SATURDAY~16 THURSDAY
兵庫県立芸術文化センター開館20周年記念公演
「明日を落としても」

■会場/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
■開演/10月11日(土)16:00
10月12日(日)~16日(木)13:00 ※14日(火)休演
■料金(税込)/全席指定 一般¥8,500 U-25¥2,500
■お問合せ/芸術文化センターチケットオフィス TEL.0798-68-0255
(10:00~17:00 月曜休、祝日の場合は翌日)



ヴァイオリニスト古澤巌と織りなす、唯一無二のステージを山本耕史が語る!


「山本耕史」スペシャルインタビュー
取材日:2025.06.02


ヴァイオリニストの古澤巖と俳優の山本耕史が、
百戦錬磨のミュージシャンたちと織りなす「ダンディズムバンケット」は、
コンサートとお芝居を融合させたエンターテインメント。
その神髄を山本耕史に訊いた。


「ダンディズムバンケット」とは、どのようなステージなのでしょうか?

いわゆる通常のコンサートではなく、ミュージカルでもなく、お芝居でもない。簡単に説明しますと、コンサートとお芝居を融合させたエンターテインメントです。例えばアミューズメントパークにはそれぞれにコンセプトがあって、その世界観の中でアトラクションを楽しみますよね。そのように、「ダンディズムバンケット」にもここでしか体感することのできない世界観があり、その中で音楽とお芝居とを融合させたものを楽しんでいただきます。冒頭、私はナビゲーターとして「ようこそ、ダンディズムバンケットへ!」とお客さまに語りかけ、その世界へと誘います。


各会場の扉の向こうに特別な世界が待っているのですね。あまり詳しくお聞きしてしまうと、ネタバレになってしまのではないかと…。

いやいや、どんなに詳細に書いただいたとしても、会場にお越しいただいて体感していただかなければ、この世界観、それから空気感は想像できないと思います。場面ごとに、コンサートやお芝居の要素が全面に出てくるのですが、ある瞬間ではお客さまと戯れるような場面があったりもするんです。それは言葉では伝えきれません。

今回、3シーズン目となりますが、そもそもどのような経緯でスタートしたのですか?

もう一人のメインキャストであるの古澤巖さんは、クラシックに留まらずさまざまなジャンルの楽曲を演奏する多彩なヴァイオリニストです。その古澤さんと一緒に何かやってみよう、というところから始まり、各々のアイディアが集約され今の形になっていきました。

演奏家と俳優と、表現の手段は異なりますが、古澤さんから影響を受けることも?

そうですね、古澤さんの演奏を聴かれたことのある方は皆さんご存知かもしれませんが、古澤さんは演奏しているときに特別な世界観をまとう方なんですね。そしてそれは、古澤さんがヴァイオリンを通して発する音色を聴いた瞬間にはっきりと伝わってくるんです。その世界観にいつも触発されています。私にとっての表現は台詞であり言葉ですが、古澤さんにとってのそれは音色なんですね。演奏家なので当然のことではあるのですが、そこには古澤さんならではの説得力があり、表現者として共通点が感じられます。

役作りはどのようにされているのでしょうか?

私はストーリーテラーという役割ですが、初回は音楽の中にスッと入り込み、楽器の一部のような雰囲気を目指していました。けれども2回目からはもっとはっきりと存在感を打ち出してみようと考えるようになり、回を重ねるごとにキャラクターのイメージが固まってきましたね。具体的にどのようなキャラクターかと言いますと、「何者なのかわからないような存在」をイメージしています。そして例えば、「そうだよね」とフレンドリーに語りかけて親しみを感じていただいたり、「そうですよね」とかしこまった台詞で距離感を生み出したりと、言葉のチョイスを大切にしています。


前回から演出もなさっていますが、演出する上で気をつけていることや心がけていることはありますか?

メンバーは、私と古澤さんの他に、音楽監督でもあるピアノストの塩谷哲さん、ギタリストの小沼ようすけさん、パーカッショニストの大儀見元さん、ベーシストの井上陽介さんと、プロデューサーによる選りすぐりの一流のミュージシャンなんですね。皆さん音を自由自在に操るのでリハーサルでは、「そんなことができちゃうの!?」という演奏がポンポン出てくるんです。音の魔術師のような存在ですね。一方でとても個性的な側面もあって、通常のコンサートのように演奏していただくだけではある意味もったいないと思っているんです。一人ひとりのオリジナリティを存分に活かしたくて、ちょっと遊ぶ瞬間を作るようにしています。かといって、あまりセリフをたくさん入れてしまうと全体的な世界観を維持することが難しくなるので、そのバランスを見極めながら創るようにしています。

「音楽の鍵・音楽の扉」と副題が付けられていますが今回のテーマの神髄は?

今回は音楽の起源について考え、音楽はもともとどこで生まれたのか、“音”が音楽になったのはどういうきっかけだったのかということをイメージしながら創り上げています。このテーマにたどりついたのは、今シーズンの方向性を決めるにあたりメンバーの皆さんとお話ししていた際に、「今、人々にとって音楽はどのような存在なのか?」ということが話題に挙がったんです。インターネットを通じていつでもどこでも気軽に音楽に触れることができるようになりましたが、その一方では音楽大学の進学率が下がっているという現実があるそうなのです。昔は音楽をやるにはそれなりの覚悟と情熱が必要でしたが、身近な存在になったが故にそこまで熱意を持って取り組む人が減ってきているのかもしれません。けれどもSNSなどを見てみると、それぞれのカタチで音楽を楽しんでいる人たちが大勢いて音楽そのものの可能性はむしろ拡がっているように感じます。つまりは、明らかに音楽への道筋が変わってきているのだと思います。そういうことを話し合ったことにより、「音楽とは何なのか?」という大きなテーマが見えてきたんです。とはいえ、難しいことを言っても音楽は考えるものではないと思いますので、最終的には「音楽って楽しくて良いよね」ということを再認識していただけたらうれしいですね。

◎Interview&Text/向後由美
◎Photo/安田慎一
◎Makeup&Hairstyling/佐藤友勝
◎衣装/[シャツ]Amiri, [パンツ]MARNI



9/14 SUNDAY
古澤巖×山本耕史「DANDYISMBANQUET3」
■会場/愛知県芸術劇場大ホール
■開演/16:00
■料金(税込)/全席指定¥9,000
■お問合せ/サンデーフォークプロモーション TEL.052-320-9100



音楽劇「エノケン」で榎本健一の人生を生きる!


「市村正親」スペシャルインタビュー
取材日:2025.04.23


戦後から昭和の日本を、笑いの力で照らし続けた榎本健一。
「エノケン」の愛称で親しまれた喜劇役者の人生を、
舞台役者として53年目を迎えた市村正親が演じる。
喜劇とは、笑いとは、苦悩とは、人生とは。
作・又吉直樹、演出・シライケイタが生み出すエノケンを
どんなふうに演じていくのか、その思いを聞いてみた。


エノケンを演じるという話を聞いたとき、どんなお気持ちでしたか?

僕のなかのエノケンは、子供のころに聞いたコマーシャルの歌声と、エノケンが出演していたドタバタ喜劇映画『雲の上団五郎一座』。そういうものは子供のころから知ってはいたんです。でも自分はミュージカルやシェイクスピアをやってきたので、エノケンのような超喜劇はやったことがないんですよ。初めて、日本人が誰でも知っている現代の有名人をやることになったので、とてもやり甲斐のある役と出会ったなと思いましたね。

又吉直樹さんの作品を演じることになりますが、どんな印象ですか?

又吉さんの書いている人間は、太い血管ではなく毛細血管を流れている血液のような人物だと感じています。昔『ミクロの決死圏』という映画がありましたが、あんな風に人間の体に入っていくような。だから、エノケンという人の血液のなかに、どこまで僕が入っていけるかな?という感覚です。1+1は2じゃないものを出してくる又吉さんが、喜劇王エノケンを取り巻く人間ドラマを、市村と言う役者にあてて、どんな風に描いてくるのかがとても楽しみです。

同じ舞台に立つ人間と言う立場から、エノケンとの共通点はどこでしょうか。

僕は実際にお会いしたことがないんですが、本を読んだ限りでは、一日中芝居のことを考えていたんだろうなと思いますね。僕も西村晃さんの付き人をやっていた時、三國連太郎さんや小沢昭一さん、北村和夫さん、みんなで集まれば一日中芝居の話をしていたんです。今、僕も舞台の公演中なんですが、しょっちゅう台本を開いたり、あそこはこういうこともできるな、と台本を手放さない。そういう意味でのパッションは、エノケンと似ているかなと思います。


歴史上の人物ではなく、身近な舞台人を演じるのは初めてということですね。

そうですね、でもある意味、エノケンは昭和の歴史上の人物。僕はもともと他人の激しい人生を2、3時間の舞台の上で生きることが好きでこの業界に入ってきたわけだけども、今回榎本健一という激しい人生をどう生きるかを考えると今から楽しみです、生きるすさまじさみたいなものを出せたらいいなと思います。

同じ喜劇王でいうと、アメリカにはチャーリー・チャップリンがいますが…。

僕、チャップリンとエノケンにはどちらも昔から興味があって。で、チャップリンの笑いとエノケンの笑いって違いはありますが、チャップリンの初期の映画を観るとエノケン的な要素がいっぱいあるんですよね。今回、僕は、喜劇役者のエノケンのおかしさや声色をまねるのではなく、榎本健一という人間を生きたいなと思っています。

エノケンは足を失うという悲劇も。人間の生き方が問われる激しい人生です。

足を切断せざるを得ない状態になったエノケンの気持ちを考えると、舞台俳優としての僕からは、どんなことが自分の中に生まれてくるんだろうと思いますね。そういうところも含めて、すべてを味わった人なんだなと感じているんです。だから、挑戦し甲斐がある。僕、もう76歳でしょ?実際に山に登る足腰ではないけれど、舞台の山なら登りたいし、まだまだ登らなくてはならない山はあります。久々に大きな山だなという気がしているし、この年齢になっているからこそ、榎本健一という人の生き方がわかるんじゃないかな。


市村さんの人生にも辛い出来事があったと思います。どう乗り越えてきましたか?

それはね、もう我慢しかないですよ(笑)。痛いのを我慢してる。ケガをしても舞台を降りるわけにはいかないから。それに、ブルーな気分の時こそ人の本質が出るっていうかね。健康すぎて調子がいいから芝居がいいかというと意外と面白くないんですよ。トゥーマッチになっちゃうの。そしてそれはお客さんにばれちゃうんですよ。僕の舞台は笑いが起こるシーンが多いんですが、エノケンの自伝を読むと「喜劇とは、笑わせようと思っちゃだめだ。一生懸命生きていることが傍から見ているとおかしい」とあった。台本というものは、役者が役を生きていれば、ちゃんと笑いが取れるようにできているんですよ。人生を膨らませようという思いはいいんです。でも、役者が調子に乗って俺の技量で笑わせてやるなんて思うから…(笑)。

なるほど。では、舞台人として一番大事にしていることはなんですか?

やっぱり、生きるってことだよね、役を生きるということ。昔は見せよう見せようとしてきたこともあったけどそれには限界があるんですよ。黒沢映画に出てくる役者さんの芝居をみると、やっぱり生きているでしょ?役者は「役を生きる」という事なんです。

◎Interview&Text/田村のりこ
◎Photo/高橋俊詞



11/1 SATURDAY 〜9 SUNDAY
音楽劇「エノケン」
■会場/COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
■開演/11月1日(土)・3日(月・祝)・5日(水)・6日(木)・7日(金)・9日(日)13:00
11月2日(日)・8日(土)12:00、17:00
※11月4日(火)は休演日
■料金(税込)/全席指定¥12,800
■お問合せ/キョードーインフォメーション
TEL.0570-200-888(12:00~17:00 土・日・祝休業)



今年も熾烈なオーディションを勝ち抜いて、ふたりのアニーが誕生!


「丸山果里菜×小野希子×藤本隆宏」スペシャルインタビュー
取材日:2025.04.03


名曲「トゥモロー」で知られるミュージカル「アニー」は、今年、
1986年に日本テレビが上演をはじめてから40年目を迎える。
ファミリー層に絶大な人気を誇っているミュージカルだが、
近年では大人層のファンも急増している。
毎年非常に高い倍率であることで知られる
「アニー役/孤児役」のオーディションは一般公募によるもの。
今年のアニー役(ダブルキャスト)、
丸山果里菜(チーム・バケツ)小野希子(チーム・モップ)、
そしてアニーと出会い、心を通わせていく大富豪のウォーバックス役、
藤本隆宏に見どころを聞いた。


舞台は世界大恐慌直後のニューヨーク。
孤児院の前に置き去りにされたアニーはいつか
両親が迎えに来ると信じて、前向きに生きていく

毎年非常に高い倍率であることで知られる「アニー役・孤児役オーディション」に挑戦し、最終審査でアニーに決まった瞬間の気持ちは?

丸山:私は3度目の挑戦だったのですが、まさか選ばれるとは思っていなかったので、「本当に私がアニーなの?」と、とても驚きました。稽古が始まって、「いよいよだな」と現実感が湧いてきました。

小野:私は今回が2度目でした。選ばれたときは、まるで夢を見ているようでした。最初はただただうれしい気持ちでいっぱいでしたが、徐々に緊張感が湧いてきています。

アニーのオーディションに挑戦してみようと思われたきっかけは?

丸山:2022年の公演を見たことです。とても感動して、私もあんなふうに歌ったり踊ったりしたいと思い、そこから挑戦が始まりました。もともと歌うことは大好きなのですが、アニーの歌には高い音がたくさん出てくるので、どうやったらその高い音をきれいに歌えるかが難しかったです。

小野:私は2023年の公演を見て、アニーのひたむきな姿勢やいつも前向きなところを演じてみたいと思ったのがきっかけでした。そして、お客さまに感動を届けたいと思い挑戦しました。私も高い声を出すのが大変でしたが、その分、歌えるようになったときは充実感で満たされました。

アニーの衣裳、お似合いですてきです!

丸山:私もとても気に入っています。初めて着たときは「わぁ、本物だ!」と思いました(笑)。

小野:私も「アニーだ!」って思いました(笑)。この生地がふわふわとしているところが好きで、着心地も良いです。

藤本さんはウォーバックス役で8度めの出演となりますが、今年の稽古場の雰囲気はいかがですか?

藤本:とにかく明るいですね。笑いの絶えない、にこやかな雰囲気なのが今年の特徴だと思います。それから、これは関わっている全員がそうだと思うのですが、丸山さんも小野さんも純粋にお芝居が好きで、演じることが楽しい、という気持ちが全身から溢れているんですね。大人になるとどうしても、そうした想いをストレートに表に出すようなことがだんだんとなくなってくるように思うのですが、このミュージカル「アニー」に限っては、そうした「純粋さ」というのが最も大事な精神なのだということを、改めて、ふたりから教えてもらったように思います。

このインタビューが始まる直前、少し緊張された面持ちだった丸山さんと小野さんの表情が、藤本さんの姿が視界に入った瞬間にフワッと和らいだのが印象的でした。キャストの皆さんが、良好な関係を築かれているのがうかがえました。

藤本:大人キャストも子供キャストも皆、とても良い関係性が築けていると思います。でもそれ以前に、ふたりともすごくいい子なんですよ。だからこそそうした関係が築けるのだと思います。

丸山・小野:うれしいです!

おふたりは藤本さんのどんなところが好きですか?

丸山:全部だよね?

小野:うん、全部です!

藤本:僕もうれしいです(笑)。


皆さんそれぞれにイチオシの場面があると思うのですが、教えていただけますか?

丸山:私は最初の方に歌う「ハードノックライフ」のシーンが好きです。

藤本:第1幕が始まってすぐの2曲目ですね。子供キャストが皆で歌うシーンなのですが、とても伸び伸びと元気に歌っていて、今の時点で既に非常に高い完成度です。

丸山:元気いっぱいの歌なのですが、その裏に孤児であるアニーの辛さが感じられ、胸がギュッとします。

小野:私は「フリードレス」です。私自身は出ていないシーンなのですが、孤児たちが楽しそうに笑いながら歌っているところを見ていると、私も楽しくなります。

藤本:ラジオから流れてくるバート・ヒーリーというDJの話し方を孤児達が真似しながら歌って踊るシーンですね。このシーンも良いですね。どのシーンも子供たちが本当に一所懸命で、稽古では思わず聴き入ってしまうのですが、そうすると自分の演技ができなくなってしまうので感情移入し過ぎないようにいつも気をつけているんです。今こうして、これまでの稽古のことを振り返っても目頭が熱くなります。

子供達もプロとして真剣に取り組んでいるからこそですね。

藤本:勿論そうです。時には稽古で泣いてしまう子もいるのですが、決して厳しい現場ではないので怒られて泣くわけではないんです。できない自分に対して悔しくて涙が出てしまうんですね。「舞台に立つ」ということは大人も子供も関係なく、プロとして立ち向かっていかなければならないというのを子供達も皆、無意識のうちに理解しているのだと思います。私達俳優はさまざまな作品に取り組みますが、たくさんの子供達の成長と共に歩むアニーのような現場は、他にはなかなかありません。唯一無二だと思います。子供達が努力している姿を目の当たりにして、大人達も鼓舞され進化成長する。アニーにはそういう側面があります。

最後に読者の皆さんにメッセージを。

藤本:ブロードウェイミュージカルの中でも、1977年にトニー賞ミュージカル作品賞を授賞した名作ですから大人も楽しめる作品ですし、子供達が主役ということで子供達も楽しんでいただける。本当に幅広い層に感動をお届けすることができるすばらしい作品だと感じています。ファミリーは勿論のこと、大人の方々にもぜひ会場にお越しいただきたいです。丸山さんと小野さんは、どんなところに注目してほしい?

丸山:私はアニーの気持ちの変化に注目して見てほしいです。特に第1幕から第2幕にかけての変化に感動してほしいと思います。

小野:私は、「トゥモロー」を歌うとき、サンディー(犬)に「大丈夫だよ」と語りかけるシーンがあるのですが、そういう前向きなところに注目して見てほしいです。

藤本:アニーとサンディーとの絆は稽古の賜。深い部分で心が通わなければ、ワンちゃんとの演技はできませんからね。名古屋公演の頃には今以上に深い絆で結ばれていると思います。

丸山・小野:千秋楽まで、がんばります!

◎Interview&Text/向後由美 ◎Photo/中野建太



8/29 FRIDAY〜31SUNDAY
丸美屋食品ミュージカル「アニー」
■会場/愛知県芸術劇場大ホール
■開演/各日11:00、15:30
■料金(税込)/全席指定 S¥9,800 A¥7,800
■お問合せ/中京テレビクリエイションTEL.052-588-4477(平日11:00〜17:00)



「ムジークフェストなら2025」に豪華ソリストと共に登場!


「藤木大地」スペシャルインタビュー
取材日:2025.02.22


本誌「MEG関西版」でコラムを担当する藤木大地が、
奈良県の大和高田さざんかホールに
「藤木大地&みなとみらいクインテット」として豪華ソリストと共に登場する。
今回のコンサートは奈良県が主催し、今年が12回目となる
「ムジークフェストなら2025」のメインのコンサートだそうだ。
コンサートの聴き所などを、このホールで
レジデント・アーティストを務める藤木大地に聞いた。


大和高田さざんかホールには、2022年以来3年間で4度も出演されています。「藤木大地&みなとみらいクインテット」としても2023年に出演されていますね。

ホールは来年で30周年だそうですが響きも豊かで美しく、とても丁寧に使用されていて、市民に愛されていることがわかります。ホールスタッフの皆さんのホスピタリティには頭が下がりますし、「しっかり演奏でお返ししよう」と出演者と話しています。


「みなとみらいクインテット」は藤木さんが横浜のみなとみらいホールのプロデューサー時代に作られましたが、反田恭平、石田泰尚とプロデューサーが代わっても続いています。

僕がプロデューサーの時に「つなぐ、むすぶ、のこす」をコンセプトに、全国のホール企画担当者が魅力的に感じる豪華メンバーによるクインテットを結成して、巡回する提案をしました。今回も豪華なメンバーですよ。前回と同じなのはヴァイオリンの成田達輝さんとヴィオラの川本嘉子さん。もう一人のヴァイオリンは、周防亮介さんから山根一仁さんに、チェロは上村文乃さんから遠藤真理さん、そしてピアノは加藤昌則さんから髙木竜馬さんに代わります。

今回、「ムジークフェストなら2025」の主催公演の一つに選ばれました。このメンバーでチケットが2,500円と格安なので、完売は必至ですね。

大和高田は大阪からも京都からも近いです。今回は「ムジークフェストなら」のフライヤーで大きく取り上げて貰っているので、大和高田さざんかホールの存在が広く知られると良いですね。前半にこのメンバーでブラームス「ピアノ五重奏曲」を全曲演奏し、後半は僕も加わってバラエティに富んだプログラムでお楽しみいただきます。

後半のプログラムを紹介してください。

僕がこのコンサートのホストとして、喜歌劇「こうもり」より「お客を招くのが好き」を歌う所から始まります。マスカーニ「アヴェ・マリア」、モリコーネ「ネッラ・ファンタジア」、村松崇継「生命の奇跡」などバラエティに富んだ名曲の数々を歌います。「みなとみらいクインテット」と僕の歌が一緒になるとどんな響きが生まれるか、どうぞ会場でお楽しみください。


藤木さんは2012年の「日本音楽コンクール」で、初めてカウンターテナーとして優勝されました。それ以降のご活躍もあって、カウンターテナーの概念が大きく変わりました。普段の会話と違う声で歌うのは大変だと思うのですが。

身体を楽器とする僕たち声楽家は、アスリートと同じです。音楽性や経験値は時を重ねることで豊かになりますが、筋肉は確実に衰えます。特にカウンターテナーの寿命は長くないと言われています。僕は自分で衰えを感じ、今まで出来ていたことが出来なくなってまで歌いたいとは思っていません。今はまだ、日々向上している実感があるだけに、ピークを迎えるまでにやれることは全部やりたいと思っています。

最後に「MEG関西版」読者の皆さまにメッセージをお願いします。

改めまして「ムジークフェストなら2025」にお招きいただき感謝申し上げます。日本を代表する豪華メンバーによる「藤木大地&みなとみらいクインテット」で、聴き応え十分なプログラムをご用意しました。しかも破格のお値段でお聴きいただけます。どうか大和高田さざんかホールにお越しください。皆さまのご来場をお待ちしています。

◎Interview&Text/磯島浩彰
◎Photo/安田慎一
◎Hairstyling/RINA YAMAHATA



5/31 SATURDA
ムジークフェストなら2025
藤木大地&みなとみらいクインテット

■会場/大和高田さざんかホール 大ホール
■開演/14:00
■料金(税込)/一般¥2,500
■お問合せ/さざんかホール TEL.0745-53-8200
※未就学児入場不可