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「牛田智大」web限定インタビュー
取材日:2013.07.31


’12年、日本人ピアニストとして史上最年少デビュー。
類まれな才能で注目を浴びる牛田智大が、MEG-netに再登場。
名古屋で初めての本格的ソロリサイタルを目前に控え、
ステージへの意気込み、ピアノへの取り組み方、
デビューからこれまでの成長について、語ってくれました。

昨年3月のデビューから1年半。演奏家として変化したところはありますか?

いろんなところで演奏させていただいたり、いろんな方とお会い出来たりして、音楽に対する考え方が変わってきました。強くなったなと言った方がいいですかね。音楽でいろんな方に癒しみたいなものをお届けしていきたいという気持ちが強くなった気がします。いろんなところでいろんなお客様の前で弾かせていただいて、毎回、お客様からいいエネルギーをいただいているからかもしれません。

大変な読書家だそうですが、本を読んで感じたり考えたことが、演奏や音楽性を高めることに役立っていますか?

小説は、自分が普段なんとなく感じていることを文章にして表現してくれるので、自分の思っていることがより明確になります。それは、演奏にも凄くいい影響を与えてくれていると思います。僕が好きな小説家は重松清さんです。最近読んだのは「星のかけら」という作品。凄く面白かったです。

現在、モスクワ音楽院ジュニアカレッジに在籍されているそうですが。

音楽院の先生方が定期的に日本にいらっしゃったときに教わっています。今年の2月にはモスクワに4日間ぐらい行ってレッスンを受けました。モスクワ音楽院の先生は、生徒一人ひとりの意見を凄く尊重してくださるんですね。僕たち生徒をひとりの音楽家として見てくださるのが凄く嬉しいです。ロシアは凄く人間的に温かい国だと思います。皆さんの心の大きさを凄く感じます。

技術的なことで、日本で教わるのと違ったところはありますか?

ペダルの使い方を、日本とは凄く違う教育をされるんですね。日本の教育では、どちらかというと音を操る感じがするんですけど、モスクワ音楽院では音ではなく響きを操る。そういう演奏をさせるんだなと思いました。僕は、ピアノというのは音を使って歌うことが出来るのが一番の魅力だと思っています。モスクワ音楽院の先生方は「音楽は歌だ」という指導をされるんです。モスクワ音楽院の学生は、必ず声楽の伴奏を勉強するんだそうです。「音楽は歌」ということを凄く大事にしているんだなと思います。僕は伴奏の経験はまだありませんが、これからもっとピアノを勉強していく上で、ぜひやってみたいです。


6月に発売されたセカンドアルバム「献呈〜リスト&ショパン名曲集〜」の選曲のポイントを教えてください。

アルバムのタイトルにもなっている「献呈」という曲は、シューマンが結婚するときに妻となるクララに捧げた曲です。だから、僕の演奏を聴いてくださっている方々や、いつもお世話になっている方々に感謝の気持ちを込めて演奏させていただいています。「セレナーデ」は、日暮れどきに恋人に向けて窓辺で恋の歌を歌う、そういう情景の曲です。僕はまだそういう経験はしたことがないのですが、2年前に震災があって亡くなられてしまった方々とか、被害に遭われてしまった方々に思いを込めて演奏させていただきました。それから、今回のアルバムは大切な場所というのがテーマになっているような気がします。ショパンは若いときにポーランドを出てから一生故郷に帰ることが出来ませんでしたし、リストはハンガリー出身でありながらも一生ハンガリー語が話せなかった訳ですから。僕にとって大切な場所は、生まれ故郷の福島であり、6歳まで過ごした上海であり、それから今住んでいる名古屋だと思っています。

ショパンとリスト、ふたりの音楽家のどんなところが好きですか?

ショパンは自分の思いを内側に秘めて表現するところだと思います。外には出さないけれども、心の中で葛藤があったり、落ち込んでいたりするのがショパンの特徴なんじゃないかなと思いますね。それに対してリストというのは、自分の思いを表に出す。ストレートな表現がリストの特徴なんじゃないかなと思って、そういうところが僕は好きです。

名古屋のリサイタルは、どんなステージにしたいですか?

本当に大好きな曲だけを弾かせていただくので、デビューしてから1年半ぐらいの自分の思いを全部盛り込めることが出来たらと思っています。今回の会場の愛知県芸術劇場コンサートホールでは一度、コンチェルトのコンサートをさせていただいたことがあります。繊細な音が凄く響き渡るような感じじゃなかったかな。楽しみですね。

将来、どんなピアニストになりたいですか?

僕が小さいときにいろんなピアニストに憧れてピアノを始めたように、僕よりも小さいこれからピアノを始めるようなお子さんがクラシックとかピアノに興味を持つきっかけになれるようなピアニストになりたいです。


9/14 SATURDAY
牛田智大 ピアノ・リサイタル
チケット発売中
◎曲目/リスト:パガニーニによる大練習曲より 第6番 イ短調「主題と変奏」、
シューマン/リスト:君に捧ぐ、ショパン:バラード 第3番 変イ長調 op.47 ほか
■会場/愛知県芸術劇場コンサートホール
■開演/17:00
■料金/全席指定 一般¥3,500 
■お問合せ/中京テレビ事業 TEL.052-957-3333(平日10:00〜17:00)
※未就学児入場不可