HOME > Web 限定インタビュー > 「梅棒」インタビュー

ジャズダンスとJ-POPでストーリー仕立ての作品を展開するエンターテインメント集団「梅棒」。最新作『ウチの親父が最強』作・総合演出・出演の伊藤今人さん、親父役の塩野拓矢さん、客演の多和田任益さん、横山結衣さん(AKB48 Team 8・Team K)にお話をうかがいました。

5年前に初演された人気作品の再演となります。

伊藤:初演時、長い尺の作品としては二つ目の作品だったんですが、試行錯誤しながら長い時間をかけて作った舞台で、とても思い入れがありますね。今回、踊りの質も演者のパフォーマンスもよりスケールアップ、グレードアップしてお届けしています。うちでよく上演するダンス・エンターテインメント作品では奇抜な演出を仕掛けたりもするんですが、この作品については家族がテーマということもあり、誰もが観てほっこりするような内容に仕上がっていると思います。梅棒のメンバーが11人いる中で、一番身体の大きな僕がお母さん役を演じるのですが(笑)、演技の中に、母の強さを感じていただければ。母を演じる秘訣は、とにかくお父さんを愛することですね(笑)。

塩野:(笑)初演時に続きお父さん役を演じます。それからさまざまな作品を経験してきた中で、当時はわからなかった細かいことにいろいろと気づくようになって。以前は力業で進めていたところを直していく作業は大変でしたが、そのことが今回の芝居に非常に活きていると思います。伊藤が演じるお母さんもだんだんかわいく見えてきて(笑)。今回、初めて三重のお客様に観ていただけるということで、僕たちとしても非常に楽しみですね。



横山:二人の娘のあられ役を演じます。舞台は三回目でわからないことだらけで、しかも、今回は言葉なしで身体だけで表現する難しさがありました。けれども、稽古期間でだんだんつかめてきて、本番では完璧なあられを演じることができていると思います。

伊藤:あられが成長し、結婚するまでも描かれているので、結衣ちゃんがまだ経験していないところを想像して演じる難しさ、プレッシャーもあったと思いますが、非常によく演じていると思いますね。踊り、マイム、身振り手振りで表現していくところがうちの作品の独特なところで、芝居経験が豊富な多和田くんにしても表現上セリフに頼れないという難しさがあると思うんですが、二人とも本当によくやってくれていると思います。

多和田:初めて梅棒さんの作品を観たとき、それまで観てきた芝居やダンス作品に感じなかったものをビビッと感じたんです。勝手に笑えるし勝手に泣けるし、観ていて自分の心が一緒に躍っている、そういう作品は他にないなと思って。そして実際出演してみて、自分の出番ではないところを袖で観ていても、客席の熱量が袖まで飛んでくるくらいなんですよね。梅棒の皆さんはすごいものを作り上げてきたんだなと、そのとき肌で感じました。伝わるから、お客様が自然と反応する、会場を一体にできる。僕が演じる一文字は家族と対立する立場にあって、あられと出会い、葛藤がある。強烈なキャラクターが多い中で、いい意味で普通の人物なのかなと思いますので、単なる普通の人で終わらないよう、作品をいい感じにかきまわしていけるよう、しっかりと存在したいと思っています。

横山:お稽古のときから皆さんすごいなと思ってきたんですが、実際本番の舞台に立って、皆さん、本当にかっこいいなと。そして、梅棒ファンの方々がまたすごいんです。一人一人のソロ、紹介が始まったとき、まるでアイドルであるかのような、「キャー」という声援が客席の女の子の間で上がるんですね。そういった関係性を長い時間をかけて作っていらっしゃったんだなと、自分自身、ステージに立つ人間としていろいろ感じるところがありました。



伊藤:三重の方にとっては、こういったエンターテインメント作品に接する機会ってあまりないかもしれない。でも、舞台入門編としては非常に見やすいパフォーマンスだと思いますし、そういうところを僕たちとしても目指しているので。「劇場って初めて行くけど、何を着て行ったらいいかな?」といった方の観劇デビューにぴったりの作品だと思うんです。伊勢神宮にお参りするくらいの気楽な気持ちで観に来ていただければ、鈴鹿サーキット以上の盛り上がりをお約束しますので。演劇でもありますし、ライブでもありますし、ダンスショーでもあるので、そのどれか一つにだけ興味がある方でも楽しんでいただけると思うんですね。そして実際、「演劇が好きで観に来たけれども、ダンスが好きになりました」と言って帰って行くお客様も多かったりするんです。そういった意味で、非常に間口の広い作品になっているんじゃないかなと。結衣ちゃんのファン、多和田くんのファンも、二人だけではなく他のさまざまな要素を楽しんで帰ってもらえると思いますし。ずっとコミカルに進んできた中で、二人が担当するシリアスな場面があるんですが、そこではそれぞれのソロで、培ってきたダンス・スキルや芝居力をフルに発揮してくれていて。コミカルな舞台の中で、一番心を締め付けられる場面を二人に担ってもらっています。

塩野:静かに観てくださっても、自由に手拍子を入れてくださってもいいんです。軽演劇とはまた違うんですけれども、大衆演劇とか、そういった世界に近いのかなと思っていて。一緒に楽しみに行くというスタンスで来ていただけたらうれしいですよね。



最近では、愛のレキシアター『ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ』、宝塚星組公演『GOD OF STARS-食聖-』など、外部作品の振付でも活躍されています。

伊藤:梅棒は特殊な振付、特殊な見せ方をしている団体なので、ストーリーの中でダンスを取り入れたいという演出家の方、ダンサーの方たちに、いろいろな形でフィットできる、親和性があるという自信はあります。梅棒としての活動を軸にしつつ、僕たちだけでやっていては出会えない舞台芸術との出会いを大切に、活動の幅をさらに広げていきたいですね。

取材・文=藤本真由(舞台評論家)


10/22 TUESDAY・HOLIDAY
梅棒EXTRAシリーズ
「ウチの親父が最強」

【チケット発売中】
◼️会場/四日市市文化会館 第2ホール
◼️開演/17:00
◼️料金(税込)/全席指定 S¥7,800 ユースシート(18歳以下・当日指定)¥3,000
※ユースシートは演出の一部が見えにくい可能性があります
◼️お問合せ/四日市市文化会館 TEL.059-354-4501
※未就学児入場不可