HOME > Web 限定インタビュー > 上野水香インタビュー

世界的に活躍するダンサーが、オーディションで選ばれた東海地方の若手たちと共演する
「グラン・ドリーム・バレエ・フェス2023」の開幕が迫ってきた。
そこで、昨年に引き続き出演する上野水香が若手の稽古場をサプライズ訪問!
幅広い年齢層が参加する稽古に立ち会い、身振り手振りを交えてアドバイスも贈った。
その感想も含め、同イベントに対する想い、ダンサーとしての信条など尋ねた。

ゲスト出演の経緯をお聞かせください。

「グラン・ドリーム・バレエ・フェス2022」の時に初めてオファーを受けたんですけど、東海テレビさん、名古屋と言えば、私は世界バレエ&モダンダンスコンクールの時から本当に馴染み深く、来る度に「帰ってきた!」という感覚があるので「名古屋で踊れるのなら、ぜひ」とお受けしました。愛知県芸術劇場もすごくいい空間ですし、(中村)祥子ちゃんと踊れる機会もなかなかないので、楽しそうだなという想いもありました。

同じくゲストである中村さんとの出会いは?

私は東京で、彼女は海外で踊っていたので、お互い名前は知っていても接点はなかったんですけど、ウラジーミル・マラーホフさんが芸術監督を務めるベルリン国立バレエ団に彼女がいた時、「マラーホフ・フレンズ」というプログラムでベルリンに呼ばれ、初めて会ったんです。以来10年以上のお付き合いですね。めったに会えないんですけど、時間ができるともう……、前回の帰り道は新幹線の中でずっとしゃべっていました(笑)。

若手の稽古はいかがでしたか。

私も緊張しましたけど、みなさん、固まってましたね。引いていたと言ってもいい(苦笑)。でも、緊張する場面は逆に力が出るというか気持ちが入るというか……。緊張する人が来ることでピリッとして、やる気も百倍になって、いい踊りができちゃうこともある。そういう力になれていたらうれしいですね。まだ稽古は3回目くらいとのことでしたが、結構もう仕上がっていて、これから本番に向けて何回も練習があるので、もっと練られていくんだろうなと。一人ひとりがしっかり踊っていて、その中に入るのがすごく楽しみになりました。みなさん、キャリアを始める段階にいて、すごく純粋な気持ちでバレエにのぞんでいるのが一緒に舞台に立つとわかる。その空気は、普段のカンパニーの公演とは違った魅力があります。自然と応援したいなとも思いますよね。前回すごく喜んでくれているのがわかりましたし、私のほうも癒され、エネルギーをもらいましたよ。


2022年公演の様子


上野さんの演目は、スペインを舞台にした恋物語「パキータ」ですね。

構成上、全幕ではなくグラン・パ・ド・ドゥでもなく、ある程度の尺がある作品となると、そんなにたくさんはないんですね。その中で「パキータ」は華やかですし、最近ずっと踊っていなかったこともあり、やってみたいなと。今回お見せする場面は、バレエの様式美であったり、技術的な華やかさが前面に出る場面なので、きちんと決めて見せることが大事。主役に関しては、出てきた瞬間に舞台人の風格や格調、器量の大きさみたいなもので空間を埋めなければいけない。そこが「パキータ」という作品のやりがいでもありますね。

東京バレエ団の正団員からゲスト・プリンシパルとなり、変化はありましたか。

踊りを辞めたわけではないので、心境も生活も特に変わった感じはないんですよ。それに、この職業は身体を使うので、明日どうなるかわからない。常にそう考えて生きているので、ゲストになったから大変とか楽とかもない。たぶん引退したら初めて変わるんでしょうね。稽古をしなくなり舞台に立たなくなれば、それこそ変わると思います。

ダンサーは365日、身体を動かしているイメージもありますが……。

そんなことはないですよ(苦笑)。休みは取りたいタイプなので、土日は休みです。気持ちの切り替えには、運転が好きなので車に乗るのが気分転換になってますね。上手かどうかはわかりませんけど、運転は好きです。身体は使わず、別の意識を働かすところがいいのかも。ダンサーはみんな、何かしら息抜きの方法を持っていると思いますよ。

最後にメッセージをお願いします。

東海地方でバレエを頑張っているダンサーたちが一生懸命に練習してのぞむ舞台なので、みんなの想いが舞台にのっていることは間違いありません。ぜひ良い「気」を感じるために劇場へお越しください。気を感じることは劇場のいちばんの醍醐味。流行りのAIやロボットは、スタイルが良くて足もクルクル回るようなバレリーナを作ることができるかもしれませんが、そこに気はないですよね。オーラや魂、人を揺さぶるような何かは、生身の人間だけが生み出せる。劇場空間で生身の人間が発するものを感じてもらえる時間になればいいなと思っています。

◎Interview&Text/小島祐未子



10/8 SUNDAY~10/9 MONDAY
東海テレビ放送開局65周年記念
グラン・ドリーム・バレエ・フェス2023

チケット発売中
■会場/愛知県芸術劇場大ホール
■開演/10月8日(日)16:00、9日(月・祝)14:00
■料金(税込)/全席指定 S席¥10,000 A席¥8,000 B席¥6,000 C席¥4,000
■お問合せ/東海テレビ放送 事業部 TEL052-954-1107(平日10:00~18:00)
※3歳以下入場不可