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「劇団そとばこまち」Web 限定インタビュー
取材日:2017.01.09


辰巳琢朗、上海太郎、生瀬勝久ほか、座長が代替わりをしていくことで
40年の歴史を重ねてきた関西演劇界の雄、劇団そとばこまち。
現在、七代目座長・坂田大地の率いる同劇団が久々に関西圏外で公演を行う。
座長のカラーによって作風を変化させてきた彼らは近年、
時代劇エンタテインメントと現代社会を映した群像劇を2本柱としているが
新作「教師ノシカク」は“心温まるホラーコメディ”というから新境地!?
作・演出の坂田座長、主要キャストの南園みちな、田中尚樹に尋ねてみた。

関西以外での公演は久しぶりとなりますね。

坂田:確かに、五代目座長のころ東京公演を行ったのが最後ですね。拠点の大阪以外では京都や滋賀で公演したことはありますが、それでも関西圏内。だから今回「四日市演劇計画 よんぶんドラマコレクション」に呼んでいただいて嬉しかったですね。しかも京都の学生劇団出身であるヨーロッパ企画とMONOに挟まれる形のラインアップ。僕たちもルーツは京都大学の学内劇団にありますから、プレッシャーも感じますが、両劇団に胸を借りるつもりで頑張ります。

南園:今では年齢層が低くなり、メンバーも20代中心。以前のイメージがある方々にも、また違った劇団そとばこまちを観ていただけると思います。

新作「教師ノシカク」はどんな作品ですか。ホラーコメディと謳われていますが…。

坂田:基本コメディをお届けする劇団ですが、七代目はハートフルコメディの他に、殺陣ありダンスありのエンターテイメント時代劇を柱にしています。新作は、どちらかと言えば前者。実は10年以上前から構想があった作品で、自分の故郷・和歌山のような田舎というか山のある地域の話です。四日市公演を踏まえた時、ずっと温めていた本作を発表するのに良い場じゃないかと思って。

田中:今日も四日市までの道中、ぴったりの風景を見掛けました(笑)。

坂田:作品の系統としては、心温まるホラー、あるいは不思議なコメディ(笑)。僕にとってホラーは初の試みです。主人公の教師が恩師の待つ母校を訪ねると、10年前と変わっていない、10年前から時が止まったかのような村の風景を目の当たりにするという…。

その教師を演じるのが田中さんですね。

田中:はい、斎藤武という役です。武は人との接し方が上手く、同僚や生徒からも人望のある小学校教師なんですけど、理想と現実のギャップも感じていて、気づけば「なぜ自分は教師になったんだろう」と思うほど疲弊している人物。しかも心は摩擦で日々すり減っているのに、何を言われるかわからない社会だから他人には本心を明かせず、一見、無難な人に収まっている。そんな武に対して、ちょっと気の強い同級生として登場するのが、南園さん演じるタマです。

南園:子どもの頃からリーダー的な性格の女性で、今も昔も武に活を入れる存在ですね(苦笑)。ただ、物語が進んでいくうち、いちばん淋しい人なのかなとも感じます。


坂田さんの群像劇はハートフルとも言えますが、現代社会を上から下まで見渡すというか、権力者から弱者までの視点を感じます。その眼差しは優しいけれど冷静でもありますね。

坂田:笑うだけでは何か違うんじゃないかと思っていて、やっぱり社会と向き合ったものを書きたいんですよね。また、どちらかだけが善だとか悪だというのも嫌い。お互いがお互いをわかる社会であればいいのにと願っているところはあります。今回の作品で言うと、例えばモンスターペアレントであっても本当に状況が見えていないのか、気づいていないのかという疑問がある。穏便に済ませてしまいがちな社会だからこそ、放っておかず誰かが何かを言うことが大事で、早いうちに話し合って譲り合っていれば最悪の事態は避けられるはずなんです。

南園:一方で、気づいても関われない、他人まで支えられない現実もあったりしますけど…。

そういった社会的事象とホラーという表現の出会い、さらに劇的クライマックスにも期待は膨らみますが、あとは観てのお楽しみですね! それにしても、多彩な作風には驚かされます。変化を恐れない劇団そとばこまちの過去、現在、未来をどのようにお考えですか。

坂田:OBからは「時代は変わっても“そとばイズム”のようなものは残っているな」と言われるんですよ。辰巳さんの時代に回帰したという意見もありますが、それは辰巳さんを知る先輩たちと一緒に芝居をしてきた経験があるので自然と影響を受けただけで、似ていると言っても実質は違うはず。ただ、DNAは40年経ってもどこか受け継がれているんでしょうね。自分が劇団を辞めた後に何か感じるんだろうなとも思うので、その時が楽しみ。今は10年先を見据えながら、そとばこまちを全国区の劇団に戻したいと考えています。吉本興業さんと合同で公演をやらせてもらったりもしていますが、後輩たちには1歳でも若いうちに様々な経験を積んでほしいですね。ようやく少しずつ芽が出てきていて、来年あたりから東京公演も検討しているので、ここ5年を助走、布石にしなければいけません。そして将来的には、“役者集団・そとばこまち”の名声を復活させたいんです。

◎Interview&Text/小島祐未子


2/4 SATURDAY・5 SUNDAY
劇団そとばこまち
「教師ノシカク」

チケット発売中
■会場/四日市市文化会館第1ホール舞台上特設ステージ
■開演/14:00
■料金(税込)/前売一般¥3,000 前売学生¥1,500 当日一般¥3,300 当日学生¥1,600
■お問合せ/四日市市文化会館 TEL.059-354-4501
※3歳未満入場不可