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平賀マリカ 歌う生活

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先日、映画「バックコーラスの歌姫たち」を観に行きました。
この映画は、スター達のバックコーラスとして、素晴らしい声と歌を聴かせてくれるアフリカ系アメリカ人の女性シンガー達のドキュメンタリー。
映画の元のタイトルは「20FeetFromStardom(スターの座から約6メートルの距離)」という、なんともディーバ達の心境(目の前がスターの座なのに手が届かない)を表したタイトルです。
この映画を観たい、と思ったきっかけは、出演者の中にメリー・クレイトンという人の名前が目に止まったからです。実は、私がアマチュア時代、あるバンドに呼ばれてメインボーカルを任された時、メンバーから「これ、聴いといて。」と、ポンと渡されたアルバムが、メリー・クレイトンという人のLP。ジャケットもぼやけていて、顔もよくわからないし名前も聞いたことがないシンガー。しかしその歌の上手さ、存在感は素晴らしいもので、なぜこのようなシンガーが世に出ないのか、と思ったものでした。
劇中では、ミック・ジャガー、スティビー・ワンダー、クリス・ボッティ等、今をときめくスター達が続々とインタビューに答えます。メリー・クレイトンは69年のストーンズの名曲「ギミーシェルター」のバックコーラスをしていたことが判明!ミック・ジャガーに絡むスリリングな歌声に改めて魅了されました。他にも、マイケル・ジャクソンの追悼映画でマイケルとデュエットをしていたジュディス・ヒルや、一昨年の来日時に聴いたクリス・ボッティの公演に出演していたリサ・フィッシャー(彼女、ライブでも本当に上手かった!)その他にも、実力派シンガーが数人出演。彼女達は始めから、コーラスシンガーになろうとしてプロになったわけではありません。誰もがスターを夢見て音楽の世界に入り、自身の技術を磨く。そして、スターは上手いだけではなれない、といつか気づくのです。
実際に映画に出てくるシンガー達の殆どがソロアルバムを出すのですが、全く売れないという現実を突きつけられます。彼女達は、挫折を味わった後で、それでも音楽を愛している自分がいる。であれば、自分の居場所はバックコーラス、と結論をだすのです。
それは、諦め、というネガティブな選択ではない。素晴らしい音楽を作るにはいろんな立場で生きて行く事に誇りを持って生きて行こう、と決心するのです。実際そういうシンガーもいなければ、私達はその素晴らしさに触れることはできないのだから、彼女達の生き方がとても清々しい気持ちにしてくれました。私も大澤誉志幸さんのコンサートツアーにバックコーラスとして一緒に全国をまわっていた時期を思い出しました。その時も、ステージで歌っている彼の背中を見ながら、私の声がこんな素晴しいスターのコンサートの手助けになれている喜びを感じたものでした。私もこれから、どんな立場になるか?は、神のみぞ知るところですが、できればどんな立場でさえ、音楽に携わっていられれば幸せ!!だって、私も音楽を心から愛しているから。