HOME > 平賀マリカ 歌う生活 > 14「女性の歳の重ね方発見」
年の暮れ、電車の中で私の前に立った白髪のご婦人に、「どうぞお座り下さい。」と立った私に、「いいのよ、すぐに降りますから。」とおっしゃったので、「いえ、私もすぐに降りますからどうぞ。」と、無理にでも座って頂いた。年配の方に席を譲って甘えてくれないと、なんだか気恥ずかしい。
ほっと胸を撫で下ろし、電車を降りてふと、そんな私もいつかは席を譲ってもらう立場になるのだなあと思いました。見た目にも席を譲ってあげないと、と思われる年代まではまだまだ先だと思うが、また一つ歳を重ねる恐怖と寂しさ、哀しさが込み上げてくるのです。女性として生まれた時から潜在的に感じているのかもしれませんが、女性は若く、美しいほうがなにかと世間から大事にされるのでは、と。私の周りの男性陣も若い女性に大変優しい。電車で席を譲ってもらうほどの歳では無いけれど、キャリアも重ねていろんな事と戦いながらまだまだがんばっている私と同世代の女性達は、この先どうなるのだろう。女子会もこの議題は避けられず。そんな複雑な思いで新年を迎えた今年のお正月、ユーミンこと松任谷由実さんのデビュー40周年記念コンサートが武道館であり、行ってきました。特に荒井由実時代に聴いた彼女の曲は衝撃的でした。「ひこうき雲」「やさしさに包まれたなら」「ベルベット・イースター」「私のフランソワーズ」などなど。未来を夢見て、恋をして、何かに夢中になって、青春時代を彼女の歌と共に駆け抜けた、あのきらきらした時代を思い出し、涙が溢れました。そして、声が枯れるまで一緒に歌いました。
ファッショナブルないでたちに全く年齢など感じさせない存在に、まさにリスペクトそのもの。一緒にステージに立ったバンド、キャラメルママのメンバー、そして、作編曲家の御主人が「とにかく、最初に聴いた時は彼女の生み出す楽曲の素晴らしさと歌詞の着眼点、センスに衝撃を受けた」と話していました。今になっても全く色褪せない作品達、スタイルの良さとセンス、頭の良さ、そこにいた全ての老若男女が満面の笑みで応援し、楽しんでいる姿は圧巻でした。ここまで自分自身を昇華させ、主張して、形にしていくのにはただならぬ確執があったり、強靭な精神があったに違いありません。そして、もちろん良き理解者もいたのでしょう。
コンサートが終わり、出演者全員がステージを去る時、私の後ろにいた男性が「ユーミン、ありがとう!」と叫んでいたのが印象的でした。これだけの感動を人に与えられる、彼女の存在に対する尊敬の念が渦巻いているのを、私も十分感じることができました。会場を後にすると、不思議と歳を重ねる恐怖が遠のくとともに、これからは、女性として見かけばかりを気にするよりも、尊敬される存在になることが必要だと感じました。
そんなことを気づかせてくれたユーミンに
私も「ありがとう!」と言いたい。