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「田中彩子」スペシャルインタビュー
取材日:2022.04.16

音楽の都ウィーンを拠点に世界で活躍するコロラトゥーラ・ソプラノ。
(最も高音域で華麗な装飾技術に長けたソプラノ)
様々な“旅”をテーマとした2022年の日本ツアーで6月、
三井住友海上しらかわホールに登場。

自身でプロデュースされたエステバン・ベンセクリ作曲の新作モノオペラ《ガラシャ》(※2020年京都で世界初演、明智光秀の娘で細川中興の妻である細川ガラシャの生涯を描いた作品)では、歌手は主役の田中さんのみで、歌もほぼヴォカリーズ(※歌詞を用いず母音のみによって歌う歌唱法)という形式が話題を呼びましたね。

ヴォカリーズは万国共通で、共演する俳優の台詞は国によって言語を変えることができる。舞台美術も日本の伝統美をいかしたシンプルなものですので、場所を選ばずどこでも公演可能なのが強みです。コロラトゥーラの技巧を駆使するとはいえ、声だけで感情や想いを伝えるのはひとつの挑戦でしたが、今年の1月には国立能楽堂で能楽師の方と一緒のヴァージョンも上演することができました。



ただコロラトゥーラ・ソプラノとしてキャリアを重ねていくのではなく、音楽を通じたSDGs(持続可能な開発目標)達成に向けての取り組みや青少年の育成など、社会貢献活動にも積極的ですね。出身地である舞鶴市の文化親善大使や、細川ガラシャゆかりの京丹後市の文化国際交流アドバイザーなども務められています。

私の故郷は京都府海側のとても美しいところです。今年のツアーでも名産のシルク「丹後ちりめん」の生地で作ったドレスを着て歌う予定です。

それはとても楽しみですね!さて、今回のツアーは“ColoraturaJourney”というタイトルなので“旅”がテーマなのですか?

ドイツ歌曲からフランス歌曲、ピアソラの曲、それに書き下ろしの新曲もあるので、私の声と一緒に国や時代を越えて、いろんな形のジャーニーをしていただけたら、という想いを込めました。それと耳で聴くだけでなく、目や鼻で感じるもの、人間の五感を通した旅も目標にしていて、今年もオランダ在住の若手作曲家・吉田文さんに委嘱した“香り”をテーマにした新作を発表したいと思っています。

吉田さんといえば、昨年のリサイタルで披露された〈小さな歌〉も“香り”がキーワードでした。

Instagramを通して知り合った彼女と何かコラボレーションをしましょうっていう話になって、最初の打ち合わせでお互いの考えをすり合わせていたときに、私から香りそうなものを曲にしてみたいと言われて、素敵だなと思った。そして、できあがった〈小さな歌〉が私のコロラトゥーラの特徴である、ふわっと浮遊しているような柔らかい雰囲気を持っていたので感激しました。新作は私が好きな香水をイメージして書かれた曲で、今後も続く連作の第1弾。嗅覚が人間の記憶と深く結びついていて、特定の香りが過去を呼び覚ますスイッチになっているように、好きな香りを嗅いだ私が例えば、子どもの頃の懐かしい風景やドキドキする経験などを思い出すのが歌のモチーフになっています。聴いてくださる皆さんも作品を通して私と一緒に想い出を辿る旅をしてくれたら嬉しい。

ピアソラの〈オブリビオン(忘却)〉も記憶についての歌です。

アルゼンチンはこれまでに何度も訪れていて、現地でタンゴの曲を耳にする度に私も歌いたいと思うのですが、現地の人に「タンゴを歌うには“どす黒い”部分が必要なので君にはまだ無理。“綺麗”すぎる」と言われていました。〈オブリビオン〉は歌詞のないものが有名ですが、ピアソラの恋人だった女性が歌詞つきで歌われています。タンゴというと男性的なイメージですがこの曲はとても女性的なのもあり、その曲をタンゴとゆかりのあるウィーン音大のジャズ専門家に、楽器の要素も表せるようコロラトゥーラも追加してアレンジしていただきました。ヴァイオリンのイメージで書いていただいて、あの「ギュイン」とした音で女性の感情を表現してみました。

なるほど。器楽曲を歌うことで、田中さんの声の持つ可能性が広がりそうですね。

はい。私自身、コロラトゥーラにはまだまだ“伸び代”があると思っているので、それを十分に使いこなせる作品をずっと追究していくつもり。それもクラシックだけでなく、いろんなジャンルの人と組んで新しい世界の扉を開きたいのです。好奇心が旺盛、気になるとすぐに飛びつく性格なので、楽しそうなことは何でもやりたい。これからも声で冒険の旅を続けていきたいです。

では三井住友海上しらかわホールでお待ちしています!

名古屋はデビューの時からお世話になっている、とても想い入れのある場所。訪れる度にあたたかく迎えてくださるので、いつも“帰ってきた”気がする。今年も皆さんと会えるのがとても楽しみです。

◎Interview&Text/東端哲也
◎Photo/中野建太



6/4 SATURDAY

■会場/三井住友海上しらかわホール
■開演/15:00
■料金(税込)/全席指定 S¥6,000 A¥5,000 U25¥2,000
■お問合せ/東海テレビ放送 事業部 TEL.052-954-1107(平日10:00~18:00)
※未就学児入場不可