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「村治佳織」スペシャルインタビュー
取材日:2023.04.27


それぞれが国内外でめざましい活躍を続ける、
クラシック・ギター界きっての人気奏者。
これまで数々の名演を届けてきた二人が、
姉弟そろって豊田市コンサートホールのステージに登場。


今年はお二人でのデュオ・コンサートが多いですね。

嬉しいことに、いろんなところから声をかけていただきました。ステージ上での相性はもちろんのこと、リハーサルや移動時間中もお互いに気兼ねなく過ごせるのがいい(笑)。姉弟仲も良くて、先日も「佳織さんよかったらお茶しませんか?」みたいなLINEが来て(私は子どもの頃から「奏ちゃん」って呼んでいるんですが…)「MCのトークに関してレッスンして欲しい」って頼まれて、2〜3時間ほど打ち合わせしました。ギタリストとしても真面目で堅実。レパートリーを拡げ過ぎず、準備に時間をかけて地道にじっくり取り組むタイプ。私が“勢い”やその場の“ノリ”を重視するのと対称的ですね。演奏は男性的で力強いけど、彼の持つ優しさが滲み出ています。


一緒に育った姉弟でも結構違うんですね。

手にしているギターも同じではなく、私はスペインのロマニリョスとかアメリカ製が好みで、弟はドイツのものが好き。爪の形も私は長めだけれど、彼は短め。それによって音色の多彩さを追究するかドライさを求めるか変わってきます。今回はソロ・パートではそれぞれの個性を、そしてデュオ・パートでは絶妙なアンサンブルを皆さんに楽しんでいただけたらと思っています。

名曲が盛り沢山のラインナップでワクワクします!

二人とも映画音楽が大好きなので、沢山選んでいます。やはり6弦×2の12弦が奏でる音の魅力をメイン・ディッシュにしたいので、それぞれのソロがそれを際立たせるようにプログラムを組みました。今のところデュオに始まり第1部は弟のソロ。第2部は私のソロで始まりデュオで終わる、そんな流れを考えています。

特にデュオ・パートはアレンジが素晴らしいです。

まさに!トレモロ奏法のテクニックを利かせたタレガの〈アルハンブラの思い出〉 はソロでも聴き応えがありますが、サグレラスの編曲によって繊細なトレモロがダブルで連なるのが見事。モリコーネの〈ニュー・シネマ・パラダイス(愛のテーマ)〉もギターの名手である鈴木大介さんらしいシンプルで効果的なアレンジが光ります。

2016年にリリースされた同名アルバムにも収録されていたデュオのための作品〈ラプソディ・ジャパン〉(藤井眞吾)はお二人の定番曲ですね。

日本の昔懐かしい様々な歌からなる組曲で、台東区育ちの私たちにとって身近な「春のうららの隅田川」の〈花〉(瀧廉太郎)の旋律も登場しますが、最後は有名な〈ふるさと〉(岡野貞一)で終わるので日本全国どこに行っても会場の皆さんの心を掴むことができると思います。

やはり村治さんのソロは、お馴染みビージーズ1977年の全米No.1ヒット〈愛はきらめきの中に〉のカヴァーで幕開けですか?

はい。近年は単独コンサートでも「ギター音楽の世界へようこそ!」という感謝の気持ちを込めたウェルカム・ミュージックとしてオープニング曲に選んでいます。曲のタイトル(※原題はHowDeepIsYourLove)も好きですね。


〈エターナル・ファンタジア−薬師寺にて〉はご自身で作曲されたオリジナル曲ですね。

もともとは奈良の薬師寺の奉納公演で演奏する予定で、ゆったりとした悠久の時の流れをイメージして書いた曲です。坂本龍一さんにも生前「作曲は続けた方がいいよ」って助言をいただいたので、今後も頑張って書いてみようと思っています。同時に、昔弾いていた曲に別の角度からアプローチすることも大切だと考えています。そうやって、ひとつひとつの曲との繋がりを深められたら…。

豊田市コンサートホールのお客さんも公演を楽しみにしていることでしょう。

いつも足を運んでいただきありがとうございます。二人揃ってステージに立つのは今度が初めてですが、ご期待ください! またあの素敵な空間で演奏できて嬉しい、スタッフの皆さんも最高です。

今年はちょうどデビュー30周年ですね。

SNSや配信アプリが充実している現代では、自分をどう見せたいのか自身で決めて考えていくセルフブランディングが主流ですが、私の場合は事務所やレコード会社というまわりのチームが求めるイメージに先ずは応えて、その上で知らなかった自分を引き出してくださる方々との出会いがあって、ここまでやってこられたのだと思っています。今まではプロデューサーなど歳が上の方のお世話になることが多かったのですが、今後は才能ある若い世代にも積極的にお願いしていきたい。今年のアカデミー賞でアジア人として初めて主演女優賞に輝いたミシェル・ヨーさんのサクセス・ストーリーを見ていて、特にそう感じました。…それにしても彼女がオスカーを手にした時のスピーチが感動的でしたね、あれには凄く勇気付けられました!

◎Interview&Text/東端哲也
◎Photo/安田慎一



6/10 SATURDAY
村治佳織&村治奏一 ギター・デュオコンサート
■会場/豊田市コンサートホール
■開演/15:00
■料金(税込)/全席指定¥4,000(25歳以下¥2,000)
■お問合せ/豊田市コンサートホール・能楽堂事務室 TEL.0565-35-8200