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「上川隆也」スペシャルインタビュー
取材日:2025.11.07


赤穂浪士たちの義と葛藤と信念を描く時代劇の決定版、舞台『忠臣蔵』。
大石内蔵助を演じる上川隆也は、ゆかりの地である赤穂を訪ね、
土地の空気を全身で受け止めたという。
上川は「大石内蔵助という役を纏う側だからこそ、
分析を二の次にして、没入したい」と静かに意気込む。


赤穂の大石神社や城跡を訪ねられたそうですが、いかがでしたか?

僕が一番感銘を受けたのは、心地いいばかりに広がっていた平野でした。背後には山をたたえて、眼前には海が迫っており、その間に千種川が作り出した三角州がある。間違いなく豊穣な土地であったでしょうし、そこに住む人々がその土地を愛するであろう条件が十二分に詰まっていたように感じました。だからこそ、純粋に家臣もそこを治める殿を愛せたでしょうし、こうした物語につながるような人間関係が作られる土壌がそこにあっただろうと疑いなく思えるような場所でした。今回、伺った上でそれが何よりも大きな収穫でした。

演出が堤幸彦さん、脚本は鈴木哲也さん。この舞台『忠臣蔵』は、どんな作品になるでしょうか?

誤解を恐れずに申し上げるならば、この物語が他と一味違う形で描かれることは間違いないと思います。その要素のひとつが、高橋克典さんが演じる吉良上野介という存在です。「人である吉良上野介が、そこにいてもいいのではないか」という視点が盛り込まれています。それだけに、スタンダードに、真っ当に『忠臣蔵』を描いていきながらも、観客の皆さんにまた新たなものをお届けできるのではないかという確信があります。

大石内蔵助の主演オファーを受けたときのお気持ちを教えてください。

驚きました。これまで『忠臣蔵』にまつわる2つの映像作品に参加しましたが、自分に大石内蔵助のお鉢が回ってくるとは思っておりませんでした。同時に、ありがたいとも思いました。悲しいかな、映像作品の1回目は浅野内匠頭、2回目は寺坂吉右衛門と、どちらも討ち入りの最後までを見届けられない人物でした。なので、今回はその一部始終をきちんと見届けたいと思っています。


大石内蔵助を演じるにあたって「分析は二の次、没入したい」とおっしゃっていましたが、その真意を聞かせてください。

「分析」という言葉を使いましたけれども、もう少し言葉を紡ぎますと、「決め込んで臨まない」という言い方が一番当たっているかと思います。例えば、Aという人物を演じるにあたって、台本のさまざまな局面で「このように動くだろう」「このようなしゃべり方をするだろう」と決め込んでいても、相手役と噛み合わなかったら意味がないんですね。今回は内蔵助の妻を藤原紀香さんが務めてくださいますが、紀香さんとの会話の中で大石内蔵助という人物に感じたものを盛り込んでいきたいと思います。

堤さんといえば立ち回りが印象的ですが、殺陣についてはどう捉えていますか?

覚悟はしております。ですが、堤さんが演出された『魔界転生』に比べると、その質も随分と違うものとして描かれていますし、また違った立ち回りをお届けできるのではないかと思っています。

妻・りくを藤原紀香さんが演じられますね。

りくという、本当に身を切り裂かれるような思いに苛まれる人物を今の藤原さんが演じたらどうなるだろうという期待しかありません。期待というと失礼かもしれませんが、その想像力をかき立てられる紀香さんのお人柄への確信は、揺るぎようがありません。


『忠臣蔵』が300年以上も人々の心をつかみ続けている理由は、どこにあると思われますか?

僕は「至極単純だから」というふうに理解しています。と申しますのは、「誰かを大事にした物語」だからです。親が子を愛するように、誰かが誰かを大事だと思う気持ちが誰にでもあるように、大石内蔵助が率いた人々の行動には、時代を問わずに共感できる要素がそこにあるからだと思うんです。政治のことはとんと明るくはありませんが、それでも折に触れて悲惨な映像などが目に触れることもないわけではない。その悲痛な声は時代を問うものではないと思うんです。大石たちは、そうした声を上げはしませんでしたが、心の中に渦巻いていたものは間違いなく今と通底するものでしょう。だからこそ『忠臣蔵』を令和の世にお届けしても、何かを感じていただけるだろうと思います。

『忠臣蔵』に触れる機会のない若い世代も多いと思います。今回の舞台は、そうした世代にもどんなふうに届いてほしいと思われますか?

なかなかお目にかかる機会の少なくなってしまった物語だと僕も思っています。だからこそ、今、上演して皆さまのお目に触れることには意味があると思っています。今回のお話をお受けしたときの「ありがたさ」というのは、そこも含まれるように思います。

最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします。

演出の堤さんもおっしゃっているように、真っ当にこの物語に携わりながら、それでもこれまでにない観点を盛り込んでお届けする『忠臣蔵』になると思います。物語をご存じの方も、今回初めて触れる方々にも楽しんでいただけるような舞台をお届けしたいと思っております。ぜひ劇場まで足をお運びください。よろしくお願いいたします。

◎Interview&Text/岩本和子
◎Photo/安田慎一



1/24 SATURDAY~27 TUESDAY
「忠臣蔵」
■会場/梅田芸術劇場メインホール
■開演/1月24日(土)12:00、17:00 1月25日(日)・26日(月)13:00 1月27日(火)12:00
■料金(税込)/全席指定[平日]S¥15,000 A¥10,000 B¥5,500
[土日]S¥16,000 A¥10,000 B¥6,000
■お問合せ/梅田芸術劇場 TEL.0570-077-039(10:00~13:00、14:00~18:00)