HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.54「邯鄲(かんたん)」

ドラマチック!OH!能

「邯鄲の枕」「一炊の夢」といった格言の元となっている物語で、古くは中国の伝奇小説「枕中記」、その後「太平記」にも登場する。この能では、自分探しの旅に出た盧生がその途上である邯鄲の地で見た夢を通じて、俗世の儚さとともに人生の真理のようなものを悟ります。物語の構成から舞台上の秀逸な場面転換、観る者の目を楽しませてくれる仕掛けや舞と、能の面白さが凝縮されています。見どころが盛りだくさんの名作です。


【物語】中国の蜀という国に、盧生(ろせい)という青年が住んでいました。盧生は楚の羊飛山に自分を導いてくれる尊い僧を求め、旅に出ます。道すがらの邯鄲という町で、宿の女主人に粟のご飯が炊けるまで眠るようにと「邯鄲の枕」という不思議な枕を借りました。これは、わが身の進むべき道を悟ることが出来るという枕。盧生が寝ていると、楚の国の皇帝の使いが盧生に帝位を譲るために遣わされたと現れ、玉の輿に乗り宮殿へ行きました。盧生は皇帝になり栄華を極め、五十年が過ぎました。在位五十年の祝宴では不老長寿の酒が献上され、ついに仙人となった盧生は舞い始めました。すると、昼夜と春夏秋冬が目まぐるしく移り変わる神秘の空間が現れたが、やがて彼の視界は歪み始め、世界は吸い込まれるように消えてゆきました。目覚めると宿の女主人が、粟ご飯が炊けたと起こしに来ます。五十年に渡る皇帝在位の栄華も一睡の夢、粟ご飯が炊ける間の一炊の夢だったのです。盧生はこの世は夢のように儚きことと、夢を通して人生の心のあり方を悟り、帰途につくのでした。