HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.46「芦刈」

ドラマチック!OH!能

没落して離れ離れになってしまった夫婦が再会し、改めて絆を結ぶという人情物の一曲。和歌の美しい言葉を引用した華麗な謡とそれに合わせて配した様々な舞や所作は、この曲の飽きのこない面白さを作り出しています。特に再会して夫婦が愛を確かめ合う場面では、和歌が重要な役割を担います。夫婦の愛情の機微や難波の美しい春景色などを、時に風流に、時にユーモアを交えながら劇的に進んでゆく見応えのある能です。


【物語】摂津国日下の里(現在の大阪府東大阪市)に住む日下左衛門(くさかのさえもん)の妻は、家が没落したため夫と別れ、京都で貴人に乳母として仕えます。三年が過ぎ生活も安定した左衛門の妻は、夫の消息を知ろうと従者と里帰りします。夫の行方は知れず、妻は日下の里で夫を探すことにします。従者は妻を元気づけようと、里人に面白いことはないかと尋ねると、ここへ芦を売りに来る芦刈の男が面白いという話を聞き出します。浜の市で妻や従者が待っていると芦刈の男が現れました。男は落魄した身の上を嘆きつつ、芦を刈る風雅さを語ります。また、葦と芦の異名などを紹介した後、有名な和歌を盛り込みながら楽しく謡を謡い舞を見せます。妻は芦を一本所望し、男が妻のもとへ芦を持って近づくと、自分の妻だと気づき身を隠します。妻は夫の心を解きほぐし、夫婦はお互いの心情を和歌に託して交し合います。左衛門は烏帽子直垂をまとい、和歌の功徳を称え祝儀の舞を舞い、夫婦は仲良く連れ立って春の都へと向かいます。