HOME > 土岐麻子「もちもち道中膝栗毛」 > Vol.06 ジョンノハットグ「ソットクソットク」
VOL.06
初めて訪れた韓国の朝は活気に溢れていた。
スープやお粥、おでんのような屋台、天ぷらのような揚げ物、大鍋で炊いた蚕…どれも美味しそうだったが、言葉がひとつも分からなかった私には買い物をする勇気などなかった。
それでもその活気を浴びるのが楽しくって、滞在中の朝は少し市場を散歩して過ごした。すると体のなかからエネルギーが湧いてくるような感覚になって、良い気分で取材に行けた。
それから15年の時を経て、私はいま新大久保の通りで同じエネルギーを感じている。
この街はいまやすっかり韓国。あの時には想像すら出来なかったK-POPの世界的な活躍と、日本の中高生の韓国カルチャーへの熱狂。私ももれなく、音楽、食べ物、ドラマ…あの頃よりもさらに深い沼にハマっている。
なかでも最近気に入っている食べ物が、餅とソーセージを交互に串に刺して揚げ焼きにした「ソットクソットク」。屋台で食べられるおやつだ。
「ソ」はソーセージ、「ットク」は餅。ようするに、「ソーセージ。餅、ソーセージ、餅」ということだ。多めの油でしっかり火を通して、ケチャップとコチュジャンが混ざったような甘めのタレをつけて渡してくれる。
破裂気味のソーセージのパリパリした皮、そして表面がザリザリしつつ中は柔らかくぷくぷくに膨らんだ餅。その食感のバランスが楽しいし、ソーセージの風味と淡白な餅のマッチングも良い。私は炊き立ての白米をベーコンで巻きながら食べるのが好きなのだが、それに似た、妙な安心感のある味だと思っている。
タレも、てきとうな雰囲気のまだら加減がちょうど良い。
あの日、眺めて歩くだけでも元気が出た屋台グルメ。韓国にはなかなか行けないから新大久保の街で憧れを叶えている。さらにいまは新大久保にすらなかなか行けなかったりもするので、ウーバーで頼むことも。家であのエネルギーを感じて、楽しくなる。
どこにでも売ってるが、お薦めするとしたらジョンノハットグのものが美味しい。