HOME > Web 限定インタビュー > 「安藤 奎(劇団アンパサンド)」インタビュー
「歩かなくても棒に当たる」で岸田國士戯曲賞受賞、ドラマ「じゃあ、あんたが作ってみろよ」の脚本など、今、最も注目を集める劇作家のひとり安藤奎。主宰する劇団アンパサンドの公演は、毎回チケット入手困難なほどの人気です。待望の三重での新作上演を前に、インタビューが実現しました。
演劇に興味を持たれたきっかけは、小学生のときの観劇体験だったそうですね。
小学校5年のときに、鴻上尚史さんの「リンダリンダ」という音楽劇を観たのが最初です。舞台自体、観るのが初めてで、休憩中にトイレに並ぶという経験も初めてでした。「(次の幕が)もう始まっちゃうんじゃないか」という恐ろしさの中で並んでいたら、前にいたお姉さんが友だちに「この舞台、当たりだよ」と言ったんです。それがカッコよくて。当たり…。「舞台を観るにも当たりとかハズレとかあるんだ」みたいな発見もあって、観劇体験の面白さがずっと残っていました。
その後、どのように演劇の道に進んだのですか?
けっこう、いろんなことを遠回りしてたどり着くタイプなんです。最初に観た舞台がバンドマンの話だったので、まずバンドに憧れて友だちと組んだりしましたが、私はもうFが届かなくて辞めちゃって…。中学の途中で大分から岡山に引っ越してからは、バスで大阪に出て劇団四季を観たりしていました。高校卒業後は演劇の専門学校に行こうと、いくつかオープンスクールに参加したら、ある講師の人から「青年座、俳優座、文学座、円といった老舗の劇団に入って、その中でトップ5に入れば、俳優として食べていけるよ」と教えてくれまして。
新劇の伝統ある劇団ばかりですね。
当時は「あ、そうなんだ」と思って、片っ端から受けたら全部落ちました。それで「1年間で劇団の研究生になれる」と謳う新設の養成所に入ったら、半年で潰れちゃって。よく言われる情報弱者の道を順調に歩んできました(笑)。その後「演劇集団円」の研究所に入ることができて2年勉強したんですけど、劇団員にはなれず、いろんなオーディションもまったく受からなくて。その頃、海外ドラマの「ゴシップガール」にハマってたので、ドラマみたいに誕生日パーティーを開こうと思って。集まってもらって何をするか考えたら、一番やりたいと思ったのが演劇で、だったら自分で上演してみようと。劇場を借りるのに団体名が必要で、とりあえず劇団名を付けて、それがたまたま続いた感じですね。「書きたい」と思って始めたわけでもないんです。
小劇場の演劇とは、どのように出会ったのですか?
五反田団の前田司郎さんのワークショップに参加したときに、友だちと劇を作っているような現場に遭遇して、とっても衝撃的で楽しい体験でした。観客の反応を感じながら演じることを学んだし、小劇場のスタイルは自分に合うと思いました。
日常のちょっとした違和感から笑いと狂気の世界に観客を引き込む作風は、どのように生まれたのでしょうか。
自分のスタイルとして決めたとは、いまだに思っていません。笑いに関しても、計算して書いているわけじゃなくて、つまらない時間にしたくないという気持ちなんです。日常の会話でも「つまんないことダラダラしゃべってもな…」と思いますよね、その感覚に近いと思います。私が人に話したいと思うのは、怖い体験なんです。日常の中でちょっとしたところから感じる怖さを書きたいという思いは、あるかもしれません。一番惹かれるのは、超常現象のように不思議なこと、証明されてないことです。子どもの頃、体験したことがあるんですよ。本屋さんのレジで、店員さんと私の間から急に金色の小さな仏様が落ちてきて、いまだに大事に持っています。小さい箱に入れて、ふわふわのクッションの上に置いて。
安藤さんの作品では、俳優の身体表現と小道具を組み合わせて超常現象を表現する演出も印象的です。
俳優さんが自力でなんとかしなきゃいけない、「人力」で何かが成立する、みたいなことはすごく好きですね。身体表現でなんとかやり切る、という俳優の面白さを堪能できる舞台を、私自身が好きなのかもしれません。
新作「立ち止まるには近すぎる」は、どんな作品になりそうですか。
人と関わりづらくなっている世の中で人と関わっていくことの大変さ、関わらないことが正解だという未来も近いんじゃないか、というようなことを描けたらと思っています。例えば、ひとり暮らしの女性が豆板醤の蓋が開けられなくて、誰かに開けてもらうために人との距離を縮める…みたいな話になればいいなと。
チケットが早々に完売し、入手できなかった人の悲報がSNSにあふれています。
それは本当にうれしいですね、ありがたいです。10年前の劇団設立当初は、キャパ15人ぐらいのところで上演していたので、こんなに来てもらえるようになるとは思ってもなかったですし、うれしく思います。もっと大きい劇場を借りる勇気が欲しいと思っているところです。
今回は初の三都市ツアー。三重の観客は楽しみにしていると思います。
三重県文化会館はつねに先見の明があって、いろいろ面白い劇団を呼んでいるイメージが強く、ずっと「三重でやりたい」という思いはありました。私自身が地方出身で小劇場の演劇などを観る機会がなかったこともあって、こういう小さいコミュニティで作っているコンパクトな作品の面白さを観ていただけたらうれしいです。
◎Interview & Text /稲葉敦子
(取材日/2026年9月5日)
11/8 SUNDAY
Mゲキセレクション
劇団アンパサンド「立ち止まるには近すぎる」
◎作・演出/安藤 奎
◎出演/峯村リエ、安藤輪子、西出 結、安藤 奎、福井 夏、永井若葉
■会場/三重県文化会館 小ホール
■開演/11月8日(日)13:00/17:00
■料金(税込)/整理番号付き自由席 一般¥3,500 22歳以下¥2,000
障がい者手帳等をお持ちの方(同伴者1名無料)¥2,500
■お問合せ/三重県文化会館チケットカウンター TEL. 059-233-1122
※未就学児入場不可











