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「市川團子」スペシャルインタビュー
取材日:2026.07.13


2024年に始動した京都芸術劇場 春秋座での市川團子自主公演「新翔 春秋会」。
第三回は、『正札附根元草摺』(しょうふだつきこんげんくさずり)、
『鷺娘』(さぎむすめ)、『善知鳥』(うとう)の三演目に挑みます。
今夏はスーパー歌舞伎『もののけ姫』でアシタカとシシ神を勤め、
NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』では森乱役で映像作品に初出演。
舞台だけでなく、制作にも携わる今、歌舞伎への思いと新たな経験について伺いました。


第三回を迎える「新翔春秋会」への意気込みを教えてください。

大学を卒業して、社会人になって初めての自主公演です。制作にも一から携わることで、ひとつの舞台が出来上がるまでに、たくさんの方々の努力があることを痛感しました。舞台と制作の両方に誠実に向き合い、昨年、一昨年より成長した姿をお見せできるよう、一所懸命に臨んで参ります。

上演する三演目について教えてください。

『正札附根元草摺』では、「荒事」を代表する曽我五郎時致を勤めます。若い頃に経験しておくことが大切だと言われるくらい、歌舞伎の様式美の基礎が詰まったお役です。『鷺娘』は、普通は女方さんが勤められる演目。鷺の精が娘姿で現れ、恋の迷いや娘心を表現し、最後は鷺の姿となり、地獄の責めに苦しみ、息絶えます。私は立役ですが、自身の研鑽の会だからこそ、心して挑戦させていただきます。

『善知鳥』は、おじい様の二世市川猿翁さんが復活させた作品ですね。

1778年に初演され、長く上演が絶えていたものを、1975年に二世藤間勘祖さんと祖父が復活上演しました。今回は、約50年ぶりに衣裳と大道具を入れた歌舞伎舞踊として上演します。今は、「猿翁アーカイブ」に残された映像や写真、台本をもとに、祖父が作品をどう復活させ、現代に伝わるよう工夫したのか学んでいます。


制作では、どのようなことを大切にしていますか。

一番大切なのは、お客様に楽しんでいただくこと。だからこそ、お客様の目線で、大道具の転換が気にならないか、昔の演出が今のお客様にも伝わるかなど考えています。ただ説明的な要素を増やしすぎると作品の情緒や面白さを損なうこともあるので、どこにどう工夫を入れるか、その判断も含め、以前より自分から提案する機会や範囲が増えてきました。

最近、「自分で選択し、責任を持つ」ことを意識しているそうですね。

はい。歌舞伎は専門性が高いので、自分の決断だけでは間違っていることも多いです。でも、決断する練習をしないと、決断できない人になってしまう。まずは自分なりの考えを提示して、そこから一緒に考えていただくという流れを意識しています。日常の小さな選択も自分で決める。その積み重ねが自信になって、間違いも学びになると思っています。

そんな中で、歌舞伎の奥深さを改めて感じたことはありましたか。

スーパー歌舞伎「もののけ姫」では、自分の引き出しの少なさを感じました。知識として持っていても、場面に応用できるほど会得できていないことがあって……。先輩から助言をいただいて、「ああ、その手があったか」と気づくことも多く、知ることと会得することの間には大きな違いがあるのだと感じました。歌舞伎の専門性の深さと、それを使いこなせるようになるまでの長い道のりを実感しています。

それらのご経験から、猿翁さんの存在を、どのように感じていますか。

祖父のアイデアは、古典歌舞伎の技法に根差していて、それを瞬時に持ってくる力と卓越したセンスがあると思います。基本的に、僕が思いつくことは全部、祖父がやっていると思うのですが、この先、頑張れば、死ぬまでには何とか2、3個くらいは祖父が思いつかなかったことができるかもしれない。とても高い壁ですが、そこを目指したいです。また、祖父がよく「芸は人なり。役者の魅力は、最終的にはその人の人間性で決まる」と言っていたのですが、今、その言葉の意味を改めて実感しています。

猿翁さんの書き込みが残る台本からも、受け取るものは大きいですか。

はい。何十年も前の台本でも、書き込まれた字の勢いから熱量を感じますし、台本そのものに宿っているようなただならぬエネルギーが伝わってきます。それを見ると「このままじゃいけない」とやる気になりますし、すごい人はここまで作品と向き合い、工夫をしているんだと痛感します。何十年も前の祖父の書き込みがヒントとなって、自分が抱えていた疑問が解けたり、作品の創り方を学ぶことが出来るのは、とても有難いですし、不思議な感覚です。

NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』では、森乱役で初めて映像作品に挑みました。大反響を呼んだ本能寺の変の撮影はいかがでしたか。

実際に火を使って撮影したので、熱や煙の臨場感がありました。初めての映像でしたし、ちゃんと気持ちが入れられるか不安でしたが、小栗旬さんが演じる信長は、放心状態でありながらも目を潤ませていて、少し子どもに帰ったように感じたんです。だから、逆に森乱は、大人の立場で「大丈夫です。安心してください」と諭すような気持ちで居ようと思いました。本能寺の変の場面では、旬さんのお芝居や大道具に助けてもらいました。

映像で得た経験は、歌舞伎にも生かせそうですか。

例えば『ヤマトタケル』にも火の場面がありますが、実際の温度や煙が目の前にある感覚を思い出せば、舞台でももう一段、臨場感が出せると思いました。五感を働かせて、舞台上にないものを頭の中で構築することはとても大切です。自分がその環境を感じられれば、お客様にも伝わる。映像での体験を歌舞伎に持ち帰って、自分の芸の幅を広げていきたいです。

◎Interview&Text/岩本和子
◎Photo/安田慎一



10/16FRIDAY〜18SUNDAY
「第三回 市川團子 新翔 春秋会」
■会場/京都芸術劇場 春秋座
■開演/10月16日(金)・17日(土)11:00、16:00 10月18日(日)11:00
■料金(税込)/全席指定 1等席¥12,000 2等席¥10,500 3等席¥6,000
        学生・ユースは各席種3割引(春秋座のみ取扱い)
■お問合せ/京都芸術劇場チケットセンター TEL.075-791-8240(平日10:00~17:00)