HOME > ドラマチック!OH!能 > Vol.88「楊貴妃」

ドラマチック!OH!能

絶世の美女・楊貴妃と玄宗皇帝の深い愛情と別離の哀惜を描く名曲「楊貴妃」。10月の豊田市能楽堂「もみじ能」では観世喜正がシテを演じ、幽玄の世界を悲しくも美しく描き出します。


撮影:青木信二

安禄山の乱により愛する楊貴妃を失った唐の玄宗皇帝は、嘆き悲しんだ末、配下の方士に楊貴妃の魂魄を探し出すよう命じました。方士は仙境・蓬莱宮に至り、そこに住む者から楊貴妃の居場所を聞き出します。教えられた太真殿に赴くと、宮殿から現れたのは楊貴妃の霊。方士は、玄宗皇帝の深い嘆きを訴え、自分が楊貴妃と会った証拠となるものを求めます。すると楊貴妃は、髪飾りを差し出しました。ところが方士は、「品物では確かな証拠にならない。玄宗との間で人知れず交わされた言葉を教えてほしい」と伝えます。そこで楊貴妃は、ふたりだけの思い出を語るのでした。それは、天にあらば比翼の鳥地にあらば連理の枝という「比翼連理の誓い」。かつて七夕の夜に、玄宗と交わした睦言でした。玄宗と離れ離れになった身の上を嘆きながらも昔を懐かしみ、思い出の舞を舞う楊貴妃。やがて現世へと帰っていく方士を見送って、ひとり寂しく佇むのでした。