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清水ミチコのシミズム

「男はつらいよ」の渥美清さんが
亡くなって今年でもう30年。
私は学生時代から大好きで、
特に寅さんの家族が争うシーンなど、たまりません。
ある日、メロンをいただき、
さっそく切って食べようとしていると
久しぶりに寅さんが帰ってきて、
みんなでそれをさりげなく隠そうとするのですが、
ついにバレてしまう。
「オレのぶんはないのかい。ああそうかい。
そうだよな、俺みたいなハンパもんに
メロンなんて食わせられないよな」と、
徐々に卑屈な世界へとひきずりこまれる。
と、おばちゃんが「私が食べなきゃいいんだろ」泣きだしたりして、
大ゲンカの勃発となります。
いい大人がメロンで争うのはなんとも悲しくておかしく、
しかもどこかで心理的な同情を呼びます。
当人はまじめなのに、見てる方は面白い。
いつかこの話をラジオかなんかでしたところ、
それを聞いた方から私にメールをいただきました。
「あれは本当にあったことなんですよ」」

とのこと。ずいぶん前の話で、
確か脚本家の娘さんだったと思うのですが、
いただきもののメロンをきっかけに、
ふとケンカになった経験談から、
あの名シーンが生まれたとか。
(実際にあったことでしたか!)と思うと、
なんだかあっぱれでした。
面白いはずですね。
食べ物の恨みはこわいとは聞きますが、
同時に本当に情けないことって、
なぜか普遍的におかしい。
私も昔、誕生日に親戚からもらって、
楽しみにしていたフルーツケーキを「まずは神棚に」と、
祖母に取り上げられ、
しかもうっかり家族全員がしばらく忘れていたため、
カッビカビに青く変色してたケーキを見て、
大声で「バカ、ばあちゃんのバカー!」
と叫んだ事が忘れられません。
叫ぶうちどんどん感情が高ぶり、大きく泣き叫ぶ私。
その姿は可哀想なはずなのに、
なぜか家族全員の口角がフガフガあがっていたのも印象的です。
なんだか情けなさすぎて、
きっと笑いたい衝動を隠してたんですね。
思い出すとやっぱり当人以外はおかしいんですね。